魚類写真集
メバルの求愛行動 Sebastes ventricosus - 2009.12.30
伊豆のダイビングでは普通に観察する事ができるメバル(眼張、鮴)。実は、2008年8月の日本魚類学会の機関誌で、これまで同じ種とされてきた「メバル」が、DNA解析によって3種に分類できることが発表されました。 メバルという名前の魚は正式には図鑑から消え、以下の3種類で分類されることになります。
メバルの種類
- クロメバル(Sebastes ventricosus)
- アカメバル(Sebastes inermis)
- シロメバル(Sebastes cheni)
我々が良く目にするのは、クロメバルという種類に当たるようで、アカメバルはさらに深い海域に生息する為に目にする事は稀だと思えます。但し、シロメバルはクロメバル同様に浅海の岩礁帯に生息する為、概観の色で見分けるのが非常に難しいかと思われます。アカメバルは体の色が赤っぽいのではっきりと他の2種と区別が付きますが、クロメバルは黒または青黒色、シロメバルは白っぽいものが多く腹びれが長いなどの特徴で判別するのですが、難しいですね。詳細には、胸びれを支える小骨のような「軟条」の数で判別し、「アカ」は15本、「クロ」は16本、「シロ」は17本と異なっているのだそうです。
冬の大瀬崎の湾内で良く目にするのが、クロメバル(Sebastes ventricosus)の求愛行動です。湾内のゴロタ場や漁礁付近にダイビングをした際には、是非、クロメバルのカップルを探してみて下さい。面白い行動を観察する事ができます。
雄のクロメバルが雌に近づいてディスプレイ
この写真の左側(白っぽく見える)が雄のクロメバルです。右側(赤っぽく見える)が雌のクロメバルです。
雄は、雌の鼻先に近づいてしきりに求愛行動を行います。この時、雄は自分の肛門部分を雌の鼻先にくっつけるような仕草をします。えええっ~~~!?て感じですが、これだけで驚いてはいけません。
雌の鼻先で放尿する雄
雄のクロメバルは、雌の鼻先に自分の尻をなすりつけ、さらに放尿する事が知られています。これが、彼ら特有のディスプレイ(動物が行う求愛行動)なのです。すごいですね・・・びっくり仰天。
この後、求愛行動に成功すると、カップルが誕生し、交尾を行います。この日は残念ながら交尾シーンは目撃できませんでした。メバルの仲間の交尾は、カサゴなどと同じように雄が雌に身体を巻きつけるようにして行い、雌の体内で受精が行われます。受精した卵は約一ヵ月後に雌の体内から稚魚としてハッチアウトします。驚いた事に雄は雌との交尾後、すぐに別のメスを探してその場を離れてしまうそうのだそうです。ディスプレイもびっくりですが、その後の行動もびっくりですね。
クロイトハゼ Valenciennea helsdingenii - 2009.12.30
大瀬崎の湾内。30mほどの円状のエリアに各種のハゼが群生する場所があります。このエリアでは、今年いろいろなハゼの姿を観察する事ができました。
2009年に大瀬崎湾内の砂地で観察したハゼ
・・・まだまだいますね。こうして思い出してみると、ハゼだけでもたくさんの種類が観察できるようで、普通種なので見逃してしまっているものや、気に留めずに撮影していないものもたくさんいます。今年、見ることができなかったキツネメネジリンボウやクロユリハゼの仲間、あるいは死滅回遊魚としての南方系のハゼなど・・・是非、来年は発見したいなと思っております。
キンギョハナダイ Pseudanthias squamipinnis - 2009.12.28
アカオビハナダイ Pseudanthias rubrizonatus - 2009.12.24
大瀬崎 岬の先端ポイントで観察した「アカオビハナダイ(Pseudanthias rubrizonatus)」の雄です。
大抵は40m以上の深場に群れているようですが、この日は幸運な事に30m付近でこの一匹のみ、発見する事ができました。
雌は、ケラマハナダイやキンギョハナダイそっくりの地味な色合いで、尾びれの先だけが赤く染まっているのが特徴で、見分けるのが大変です。この日は、残念ながら雌は見つからず、雄だけを観察しました。
アカオビハナダイとキンギョハナダイのコラボ。キンギョハナダイが、雌のアカオビハナダイだったら良かったのにねぇ・・・。
良く見ると、キンギョハナダイの向こう側に、ハナオトメウミウシもコラボしてますね。
サクラダイ Sacura margaritacea - 2009.12.22
大瀬崎の岬の先端では、長い間、日本の固有種とされていたサクラダイを観察する事ができます。サクラダイという名前が表すとおり、品のある赤地の身体に桜の花びらを散らしたかのような斑紋があり、いかにも日本的な情緒のある魚です。京友禅染の和服の柄を見ているかのような品の良さは、日本人のダイバーを虜にする強烈な魅力を持っています。
このサクラダイは、桜の斑紋が見えません。こうして群れをよく観察すると、それぞれの個体で個性があって、どれも同じではない事が、またさらに我々ダイバーの心をひきつけます。
これがサクラダイの雌です。キンギョハナダイに似ていますが、背びれに特徴的な黒い斑点があります。
雌の方が地味な色合いで、雄よりも大きさが二周り小さいのが特徴です。
サクラダイを観察するには、少し深度を深くとらなければなりません。この日は運よく31m付近でたくさんのサクラダイを観察する事ができました。ずっと見続けていたいのですが、あっという間に減圧限界がやってきます。サクラダイの観察には無理は禁物、安全第一でダイビングしましょう。