ウミウシ図鑑・写真集
キイロウミコチョウ Siphopteron flavum - 2010.01.26
ゴシキミノウミウシ Cuthona diversicolor - 2010.01.25
サクラミノウミウシ Sakuraeolis sakuracea - 2010.01.25
先日、ヨゾラミノウミウシの標準和名がすばらしいとブログに書いた。
このサクラミノウミウシも大変すばらしい標準和名がつけられていると思う。
仄かな桜色という表現がぴったりの透明感。
しなやかさや儚ささえも「サクラ」という言葉には秘められていると思う。
凛と伸びた触角は、気品と気高さを感じさせる。
花魁道中の人気舞妓が、襦袢を覗かせながらしなやかに練り歩く様子を思い出させる。
ヨゾラミドリガイ Thuridilla vatae - 2010.01.24
スイートジェリーミドリガイ(Thuridilla albopustulosa)または、ヨゾラミドリガイではないかと思われる。
スイートジェリーの名前も素敵だが、「ヨゾラミドリガイ」だなんて、なんとロマンチックな名前なのだろう。
スイートジェリーミドリガイもヨゾラミドリガイも「ゴクラクミドリガイ科」のウミウシである。
このゴクラク(極楽?)という名前も凄い。
黒~紫にグラデーションする美しいボディに、天の川の一部が照らし出されているかのような斑紋。
この斑紋は、固体毎に模様が異なるようだが、じっと見ると何かの星座を表しているような、そんな気持ちにさせられる。ふと思ったのは、天の川近くトレミーの48星座の一つであるいるか座(海豚座、Delphinus)である。
「トレミー48星座」とは、クロード・トレミー(ギリシアの植民地だったアレクサンドリアに生きた2世紀の博学者、数学者、天文・占星学者、地理学者)が定めた星座のこと。
いるか座もこのトレミーの48星座に含まれている。
ギリシャ神話の世界のイルカは極めて神聖な生物だった。 海神ポセイドンの使者として、女神アンフィトリーテへのメッセンジャーを務めたり、コリントスの宮廷音楽家アリオンを海から救ったりと、いかにもイルカらしい神話が残されている。
ヨゾラミドリガイの紋様を見ていたら、そのいるか座の配置に似ているなあと感じた。
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いるか座は、日本では夏の星座だ。
彼がまだ、ベリンジャー幼生として海面を漂っているときに、美しい星空が彼らの身体を照らし出し、焼き付けた記憶なのだろうか。
Phestilla minor ニホンアワサンゴを食するウミウシ - 2010.01.23
ニホンアワサンゴ。
千葉県保田海岸 明鐘岬の海にはニホンアワサンゴをはじめとする、多くの種類のソフトコーラルが生息している。
サンゴの天敵といえばオニヒトデを思い出すが、ウミウシの仲間でもサンゴを食する物がいる。
ただ、不思議なのは、ソフトコーラルを食するウミウシは、何種類かあり、それぞれ食するソフトコーラルの種類がはっきりと決まっているということだ。
今回観察した「Phestilla minor フェスティラ ミノール」は、ニホンアワサンゴを食していた。冒頭に明鐘にはニホンアワサンゴがたくさん生息していると記したが、不思議なことに、どのニホンアワサンゴにもフェスティラ ミノールが寄生しているわけではなく、ごく一部のニホンアワサンゴに、たくさんのフェスティラ ミノールが群がるようにして食い散らかすのだ。したがって、その狙われたニホンアワサンゴの群落は。約2週間ほどで真っ白な骨格だけにされてしまう。
上の写真は、完全に食い尽くされたニホンアワサンゴの骨格の上を這うPhestilla minorである。
もともと、このPhestilla minor自体は珍しいウミウシで、明鐘でしょっちゅう見るような普通種ではない。
そのPhestilla minorがどうして、急にこのニホンアワサンゴに集まってきたのか不思議でならない。
想像だが、集まってきたのではなく、このニホンアワサンゴの群落の中で増殖したのではないのかということだ。
たくさんあるニホンアワサンゴのどれもが被害にあっているなら、Phestilla minorが急に増えたという解釈ができるが、その一箇所だけだということは、その場所に何らかの理由で幼生が流れ着き、そこで繁殖したのではないかと見るほうが自然ではないかと思う。
「INDO-PACIFIC NUDIBRANCHS AND SEA SLUGS (Terrence M. Gosliner, David W. Behrens, and Angel Valdes)」のP.371には、サンゴの骨格を食べ、白い半円の卵塊を形成すると書いてある。
なんとサンゴの骨格から吸収したカルシウムを使って卵の塊を作るというのか!?
なんと凄いウミウシである。