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2010年1月18日
ハリセンボンの大量発生 Diodon holocanthus
真冬の様相の大瀬崎。
日中、湾内でのダイビングで一匹のハリセンボンの死骸を発見した。
ハリセンボンはもともと南方系の魚であるため、当然冬の伊豆では生息することができない死滅回遊魚である。
この日の大瀬崎の水温は、13~14度。
先年の秋に台風とともに流されてきた季節来遊魚の多くが、生命機能を維持することができず、蝋燭の火が消えるように静かに姿を消していくシーズンである。ダイバーに人気が高いハリセンボンも、この寒さでは耐えることができなかったのだろう・・・愛嬌のある顔つきや目つきの面影もない屍骸に、何とも言えない寂しさを感じ、このカットを撮影した。
ところがである。
その日の夜、ナイトダイビングに行こうと、大瀬崎湾内のマンボウ桟橋でエントリーした。
そこで信じられないような光景を眼にしたのだった。
それは、水面に夥しいほどの数のハリセンボンが群れる様子であった。
数十、いや、数百のハリセンボンが塊となって波打ち際に押し寄せてくるのである。
産卵活動でも始めるのか?
いや、どの固体も体長が10cmにも満たない、未成熟な固体である。
まさに大量発生によって異常繁殖した群れが、どういう理由なのかこの大瀬崎に流れ着いたのだ。
ハリセンボンの群れにライトを向けると、真っ白な腹の部分が、幾重にも重なって光る。
その様子は、異様であり、光が届くどこまでも先まで群れが続いているようであった。
そして、光に気がつくと、一斉にライトに向かって泳いでくる。
あっという間にハリセンボンに囲まれてしまうほどである。
大光量のビデオライトをつけたハイビジョンカメラを構えていたら、きっと数分で、ライトの前はハリセンボンに埋め尽くされたのではないだろうか?
水産事情に詳しい方にお聞きすると、今年はハリセンボンの大量発生による漁業被害が多発しており、先日も川奈漁港で4トンものハリセンボンが定置網に入り込み大きな被害をもたらしたのだという。ハリセンボンは南シナ海や東シナ海で生まれ、黒潮や対馬海流に乗って日本列島を北上してくる。夏の暖かい水温の時期には、沿岸部に寄り付き、我々ダイバーの目を楽しませてくれるのだが、15度がぎりぎりの水温らしく、15度を割り込むと死滅してしまうのである。
しかし、成魚になったハリセンボンならまだしも、5~10cm程度の未成熟なハリセンボンが、どうして大量発生し、そして大量に流されてくるのか。そのなぞはまだ解かれていないのだという。
寒さに耐えながら集団で寄り添いながらも、大瀬崎の旅館街のライトに釣られて波打ち際に寄ってきたのだろう。そしてダイビングライトが照らす一筋の光を頼りに集まってくる姿は、すでに寒さで意識がない中で、なんとか生き延びようとする必死の行動であったのだろうか。
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