2010年1月アーカイブ

2010年1月31日

イソギンチャクのマクロ撮影

 

 

 

マクロ撮影したイソギンチャクの触手

 

 

 

 

海の生物では、特にウミウシやサンゴ、イソギンチャクがとても好きだ。

陸上ではお目にかかれないような特異な姿にも興味深いが、しかしなんといってもその艶かしい動きがたまらない。

イソギンチャクの長い触手が水の流れで漂う姿を肉眼で見ても、ハッとするわけではないが、ところがこうやってカメラのファインダー越しに覗いてあげると、なんと妖艶な姿だろうと心打たれる。

真正面から、バッチリと焦点が合うように写すのも手だが、こうして何本かの触手にピントを合わせると、なぜか艶かしさが際立つ。

微風で乱れる女性の髪をイメージする。

顔がはっきり写るのもいいが、乱れた髪を手で振り払って欲しい、そうすれば良く顔が見えるのに・・・

そんな感じが、艶かしいのかもしれない。

 

このグリーンの輝きが美しいイソギンチャクは、なんという名前なのだろう。

手持ちの図鑑には似たような種は記載されていなかった。

名前が分からないほうが艶かしさも倍増するか・・・そう考える事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

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ヒドロゾア Hydrozoa

 

 

 

ヒドロゾア Hydrozoa

 

 

ヒドロ虫(ヒドロゾア、Hydrozoa)は、刺胞動物門ヒドロ虫綱の動物を指す総称である。ポリプ部分の本体をヒドロ花 (hydranth) 、下の細い部分をヒドロ茎 (hydrocaulus) 、基盤に付着する部分を足盤と呼んでいる。多くの種ではここから固着のための根のような構造が発達しているそうで、これをヒドロ根 (hydrorhiza) というそうだ。とても美しいヒドロ花を観察していると時間を忘れてしまう。

 

 

 

ヒドロゾア Hydrozoa

 

 

光を弱く当ててやると青白く、またはピンク色に輝く。たまにプランクトンのようなものを捕まえて捕食する様子が見てとれる。このヒドラ虫のポリプは無性生殖により増殖するのだが、その体の上にクラゲを形成し、クラゲの部分だけが独立して浮遊することもできる。独立したクラゲは成長の後、有性生殖を行い卵を産むのだが、受精卵は孵化後に定着してポリプとなる。この繰り返しが、ヒドロゾアの輪廻転生なのだ。ベニクラゲの仲間はこの輪廻転生を繰り返すことによって、なんと不老不死の生命体であることが知られている。

 

 

ヒドロサンゴ 

 

この小さな群落もヒドロゾアであろうか。マメホネナシサンゴの幼生かもしれない。

SF映画に出てきそうな、火の星に設置された宇宙基地・・・そんな雰囲気だ。

 

 

 

 

 

 

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アユカワウミコチョウ Siphopteron fuscum

 

 

 

アユカワウミコチョウ Siphopteron fuscum

 

 

 

アユカワウミコチョウ Siphopteron fuscum 

 

 

アユカワウミコチョウ Siphopteron fuscum

 

 

憧れのアユカワウミコチョウ(Siphopteron fuscum)にようやくめぐり合うことができた。

この日の明鐘岬は、気温も高く水温も13~14度と、とても安定していた。

先週、ゴマ粒よりも小さなアユカワウミコチョウが発見されたのに、残念ながら僕は先にエクジットしてしまった後であり、その姿を見ることができなかったのだ。あまりに残念であったので、今週もこの地にやってきた。明鐘のパロパロアクアティックさんで、1mm単位のウミウシをこの大海原から見つけ出すことができるスーパーガイド「AKEMIさん」にお願いし、アユカワウミコチョウ探索が始まった。

水深10m。

潜水時間90分。

スーパーガイドと共に私と、もう一人のウミウシ好きなダイバー3名で虱潰しに探していく。

折りしもこの日は、某国営放送の水中カメラマン数名が、新しい装置の試験のために一緒に潜っていた。湾内中央で彼らがテスト撮影をしているのを遠眼で見ながら探索が続いた。もう、寒さが限界に達した頃、彼女の合図が海中を響き渡ったのだ。

見事!

アユカワウミコチョウである。

先週発見されたものより、一回り大きく、ゴマ粒大の固体である。EF100mm F2.8Lマクロ IS USMにクローズアップレンズを3枚重ね、撮影した映像をトリミングしてようやくこのカットになった。

 

ちなみにご存じない方のために簡単に解説をすると、このアユカワウミコチョウは、頭楯(ブドウガイ)目 ( CEPHALASPIDEA )・キセワタ上科 ( PHILINOIDEA )・ウミコチョウ科 ( GASTROPTERIDAE )・キマダラウミコチョウ属 ( Siphopteron )に属するウミウシである。世界的に有名なラドマン博士のサイト「SEA SLUG FORUM」によると、日本での発見例しか登録されていない固有種である。さらに、ウミウシ図鑑.comを見ても分かるように南方系のウミウシであり、関東地方ではこの明鐘以外での発見例は報告されていない。それほど貴重で、かつ見てお分かりの通りとても美しいウミウシなのである。

明鐘でアユカワウミコチョウが発見されるようになったのは、ついこの1~2年のことだという。1月~2月下旬に発見されることが多く、発見される固体が徐々に大きく成長していること、発見される場所がいつも似通った特定のエリアであることを鑑みると、確実にこの地で繁殖~生育していると判断できそうである。

明鐘岬で潜るダイバーは、多くても日に10名程度である。毎日数百人単位でダイバーが訪れる大瀬崎でも発見例を聞いたことがない。沖縄~九州南部の地に赴けばコンスタントに見ることができるのだろうと思うのだが、この東京湾湾口部に位置する明鐘岬で観察できるということが驚きであり、ここ東京湾の不思議さをますます興味深いものにしている。

写真に撮影することはできなかったが、運良くこのアユカワウミコチョウが水中を遊泳する姿を見ることもできた。その姿は、ハダカカメガイ(クリオネ)のように翼足(pteropods)をパタパタとはためかせて浮遊するもので、とても可愛らしいものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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2010年1月30日

イナバミノウミウシ Eubranchus inabai

 

 

 

イナバミノウミウシ Eubranchus inabai

 

 

せっかくイナバミノウミウシを観察することができたのに、もっとまともな写真が撮れなかったであろうか。

あまりに小さく、ピントが合っているのか判断できない。

困ったものだ。

もう少し、時期が進めば、一回り大きくなってくれるだろうか。

 

 

 

 

 

 

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アリモウミウシ Ercolania boodleae

 

 

 

アリモウミウシ Ercolania boodleae

 

 

 

明鐘の湾内、ガイドロープ横に何の変哲もない小石が落ちていた。

パロパロアクアティックのスパーガイドウーマンことAKEMIさんが見つけてくれたこいつは、ゴマ粒ほどの大きさ。

まず、一般のダイバーではそれが生物であるということは認識できないであろう。

彼女が指差すその先の黒い「点」に焦点をあわせたつもりでシャッターを切る。

全てが勘に頼るしかない。

なぜなら、僕にはその黒いゴマ粒がいったい何なのか見えないのだ。

真剣に海の中にルーペを持ち込もうと思った。

 

 

アリモウミウシの幼生

 

こちらはすぐそばにいた、幼生。

まだアリモらしい赤い紋様が見えていない。

ヒメクロモウミウシにも似ているが、真偽は定かではない。

周辺に砂粒のように見える砂地は、実は泥である。

このウミウシの生物がいかに小さいか感じていただけるだろうか。

 

 

 

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2010年1月29日

コソデウミウシ Polycera abei

 

 

 

コソデウミウシ Polycera abei

 

 

とても小さなコソデウミウシです。

この時期は、まだ人の目にようやく見れるような小さな個体が多いようです。

2~3週間するとすぐに大きくなることでしょう。

 

明鐘ダイビングサービス「パロパロアクアティック」さんのガイドで観察しました。

 

 

 

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カリヤウミウシ Ancula kariyana

 

 

 

カリヤウミウシ Ancula kariyana

 

 

関東地方では希少種とされるウミウシ。

中野里枝さんが書かれた「本州のウミウシ―北海道から奄美大島まで 」によると、志津川の浅海では結構普通に見られると書かれている。次回、志津川で潜るときには是非発見したいものだ。

それにしても明鐘という海はすさまじい。

南方系のウミウシと北方系のウミウシが同じポイントで観察することができるのだ。

しかも東京湾という大都市からとても近いこの海で、これだけの発見があるのだからたまらない。

 

明鐘ダイビングサービス「パロパロアクアティック」さんのガイドで観察しました。

 

 

 

 

 

 

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タマガワコヤナギウミウシ Janolus indicus

 

 

 

タマガワコヤナギウミウシ Janolus indicus

 

 

幾何学的な紋様と無数の金粉をちりばめたような美しいウミウシである。

こんな派手な姿をしているのだが、実際に見つけようとするととても分かりにくい。

きっと海の中では、オレンジや赤褐色の斑点が背景に溶け込み、絶妙の保護色となるのであろう。

たった数ミリのウミウシにも生きる知恵が満載しているのだ。

明鐘ダイビングサービス「パロパロアクアティック」さんのガイドで観察しました。

 

 

 

 

 

 

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2010年1月28日

ダイオウタテジマウミウシ Armina major

 

 

 

ダイオウタテジマウミウシ Armina major

 

 

ダイオウタテジマウミウシのまだ小さな個体です。

1cmほどの個体ですが、ダイオウの名前にふさわしい風格があります。

もう少しシーズンが進むと10cmほどに成長することでしょう。

大きなダイオウタテジマウミウシを見るのがちょっと楽しみです。

 

 

 

 

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ゴマフビロードウミウシ Jorunna parva

 

 

 

ゴマフビロードウミウシ Jorunna parva

 

 

 

 

ホヤの仲間に付くゴマフビロードウミウシ。

ゴマフビロードウミウシには、色や表皮の突起の密度などのバリエーションがあり、ダイバーを楽しませてくれる。

志津川の海で見たゴマフビロードウミウシは、黄色くて大きなものだったが、ここ明鐘で見たゴマフビロードウミウシは真っ白で小さなかわいい子だった。

 

 

 

 

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ノトアリモウミウシ Hermaea noto

 

 

 

ノトアリモウミウシ Hermaea noto

 

 

明鐘パロパロアクアティックのスーパーガイドが見つけてくれた「ノトアリモウミウシ」。

初のお目見え。

レアですな。

3mmほどの黒い点・・・そんなものにしか私には見えません。

ところがこうしてクローズアップレンズ2枚を重ねて、尚且つトリミングして引き伸ばすと、なんと美しいパープル。

すばらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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カスミミノウミウシ Cerberilla asamusiensis

 

 

 

カスミミノウミウシ Cerberilla asamusiensis

 

 

堂々たる王のお出まし、カスミミノウミウシである。

口髭にも似た長い触角と、金黒のゴージャスなマントを着た王者である。

そう、リムスキー・コルサコフ作曲の交響組曲「シェエラザード」を思い出す。

イスラムのシャフリヤール王である。

千夜一夜物語の語り手、シャハラザード(シェヘラザード)に毎夜、物語を語られ次第に残虐な性格と女性不信の心を癒されていく。

アラビアンナイトとも呼ばれた千夜一夜物語の王を思い出すのである。

誇らしげなその姿は、まさにウミウシの王と言っても過言ではあるまい。

 

 

 

センヒメウミウシ Aegires villosus

 

千夜一夜物語の語り手、シャハラザード(シェヘラザード)はもちろんセンヒメウミウシ(Aegires villosus)であろう。

こんな真冬にもかかわらず、センヒメウミウシを見ることができたのは、きっとシャフリヤール王へ、千夜一夜物語を語るためであったに違いない。

 

 

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2010年1月27日

ジョオウミノウミウシ Eubranchopsis virginalis

 

 

 

ジョオウミノウミウシ Eubranchopsis virginalis

 

 

 ジョオウミノウミウシとしたが、もしかしたらホシアカリミノウミウシ(Eubranchopsis Sp.)かもしれない。同じ種族であるので似たもの同士。僕にはとても見分けが付かない。ジョオウミノウミウシのジョオウとは、女王を指すのであろうか。細い突起を持つ個体がいるので、恐らくその細い突起が、女王のティアラに似ているからなのだろうか。

 

ホシアカリという名前にはとても関心を持った。

アルノルト・シェーンベルク (Arnold Schönberg)という作曲家がいる。十二音技法(Dodecaphonic,Zwölftonmusik)と呼ばれる調性から脱却した無調性音楽のさきがけを作った革命的な音楽家である。もともとは数学者であったシェーンベルクは、無調性音楽の中に調性よりも強力な依存性、関連性を見出そうと、あらゆる古典音楽の様式、形式、リズムを踏襲し新しい分野の音楽理論を打ち立てた作曲家である。私も若かりし頃に大変影響を受けた作曲家で、恥ずかしながらも、自ら「十二音技法の為の練習曲」というオーケストラ曲を作曲した経験がある。青春時代の思い出の作曲家なのである。

 

ホシアカリウミウシと何が関係するのか・・・。

実は、シェーンベルクがまだ、十二音技法を考案する前、ブラームスやワーグナーといった近代古典音楽に傾倒していた頃、浄夜 (じょうや)(Verklärte Nacht Op. 4)という曲を作曲している。この曲は、もしご自身がロマンチストであると思われる方は是非CDをお買いになり、聴いてみて欲しい。なんという美しさ、なんという淫靡、なんという清らかさという、カオスとニュクスの両面を描いた名曲である。実はこの曲には詩がある。リヒャルト・デーメルという人が詠った詩である。「ホシアカリ」という言葉の印象は、この詩に描かれている夜を思い出すのである。

 

Verklärte Nacht op. 4
Richard Dehmel


Zwei Menschen gehn durch kahlen, kalten Hain;
der Mond läuft mit, sie schaun hinein.
Der Mond läuft über hohe Eichen;
kein Wölkchen trübt das Himmelslicht,
in das die schwarzen Zacken reichen.
Die Stimme eines Weibes spricht:

Ich trag ein Kind, und nit von Dir,
ich geh in Sünde neben Dir.
Ich hab mich schwer an mir vergangen.
Ich glaubte nicht mehr an ein Glück
und hatte doch ein schwer Verlangen
nach Lebensinhalt, nach Mutterglück
und Pflicht; da hab ich mich erfrecht,
da ließ ich schaudernd mein Geschlecht
von einem fremden Mann umfangen,
und hab mich noch dafür gesegnet.
Nun hat das Leben sich gerächt:
nun bin ich Dir, o Dir, begegnet.

Sie geht mit ungelenkem Schritt.
Sie schaut empor; der Mond läuft mit.
Ihr dunkler Blick ertrinkt in Licht.
Die Stimme eines Mannes spricht:

Das Kind, das Du empfangen hast,
sei Deiner Seele keine Last,
o sieh, wie klar das Weltall schimmert!
Es ist ein Glanz um alles her;
Du treibst mit mir auf kaltem Meer,
doch eine eigne Wärme flimmert
von Dir in mich, von mir in Dich.
Die wird das fremde Kind verklären,
Du wirst es mir, von mir gebären;
Du hast den Glanz in mich gebracht,
Du hast mich selbst zum Kind gemacht.

Er faßt sie um die starken Hüften.
Ihr Atem küßt sich in den Lüften.
Zwei Menschen gehn durch hohe, helle Nacht.

 

 

浄夜 (リヒャルト・デーメル)

二人は冬の森を歩いている
月は二人を追い、二人は互いを見つめ合う
月は、高い樫の木の上に昇る
月夜をさえぎる雲などはない
夜空に黒い木々が刺々しく浮かぶ
女の声がした

お腹の子は、あなたの子ではありません
あなたにも迷惑を与えようとしてしまう
私は引き返せない過ちを犯してしまった
幸福などはありえない
それでも生きがいを見つけ、母親の喜びや務めを
味わいたかった

身の程知らずにも
知らない男と一夜を共にした
今考えれば心が凍る思いがする
私は身ごもり、報いを受けなければならない
それなのに、貴方に、貴方に出会ったのだ

女はゆっくりと歩く
ふと見上げれば月が共についてくる
暗い眼差しは、月明かりにのみこまれ
そして男の声がした


お腹の子どもを
心の重荷にしてはいけない
今夜は星空がこんなに輝いている
何もかも全てを包みこむ輝きだ
私と君は冷たい海のなかにいるのだ
しかし僕は君の温もりを感じている
君は僕の温もりを感じているのだろう
この温もりがお腹の子を祝福するのだ
この子は僕の子として産んでほしい
君は僕の心を照らしたのだ
僕自身を子どもにしたのだ

男は両手で女を抱きしめる
女の吐息が光り輝く
二人は浄められた星明かりの夜を進む

 

 

 

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魚の眼

 

 

 

オニカサゴ Scorpaenopsis cirrhosa

 

 

ボツにしようかと思った写真なんですが、妙に気になったのでUP。

オニカサゴかと思うのですが、定かではありません。

どうしてか?

僕が持っている図鑑のオニカサゴは、どれも眼が真丸。

ところがこの写真はご覧の通りトラギスのような面白い形をしてるでしょう?

君はいったい誰??

 

※ 眼の下の辺りに白く曇った部分があるのがお分かりいただけますでしょうか?

これは、浮遊物が写りこんだのではなく、どうもサカナウミヒドラ(Podocoryna minoi)というヒドラ虫が寄生していることによるものではないかと考えています。もしそうだとしたらとても稀なヒドラ虫なのですごいなぁ!

 

 

 

 

 

 

 

 

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アカエラミノウミウシ と 寄生虫 Sakuraeolis enosimensis

 

 

 

アカエラミノウミウシ と 寄生虫 Sakuraeolis enosimensis

 

 

 

アカエラミノウミウシのきれいな固体を発見したと、喜んでファインダーを覗いたら・・・

あらら・・・

寄生虫が・・・

 

このピンク色のものは、寄生虫の卵なのだそうです。

ちょうど肛門辺りについているのでしょうか?

 

 

 

 

 

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アカボシウミウシ Gymnodoris alba

 

 

 

アカボシウミウシ Gymnodoris alba

 

 

キヌハダウミウシ属のアカボシウミウシ(Gymnodoris alba)。

キイボキヌハダウミウシは体表の斑紋が盛り上がっているが、このアカボシウミウシは盛り上がらず、オレンジ色の菱形をした煩悶が並ぶのみである。キヌハダの一族であるため、他のウミウシを餌とするハンターであることには変わりない。

触覚の間に見える小さな黒い点が眼である。

オカダウミウシを好んで食すようであるが、一度そのシーンを見てみたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

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2010年1月26日

セトミノウミウシ Setoeolis inconspicua

 

 

 

ミノウミウシの仲間 AEOLIDINA sp

 

 

 

盛り上がった背中と顔の部分の文様が特徴的。正確な名前が分からないのだが、イロミノウミウシ(スプリラ属:Spurilla )の仲間ではないだろうか。しかし疑問がある。Spurillaの仲間は触角に串のような凹凸があったり、櫛のような切れ込みがあったりするのだが、この写真ではそれらが見当たらない。

次の可能性としてはミノウミウシ亜目(AEOLIDINA)の仲間と考えた。正確な和名がお分かりの方はコメントをいただけますと幸いです。

 

※ 明鐘仲間のボブさんに「セトミノウミウシ」であると教えていただきました。ありがとうございました。それにしても、大瀬崎でよく見ているセトミノウミウシとは全然違うのでびっくりです。ウミウシの同定ってほんとうに難しいです。

 

 

 

 

 

 

 

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キイロウミコチョウ Siphopteron flavum

 

 

 

キイロウミコチョウ Siphopteron flavum

 

 

千葉県保田海岸 明鐘岬は、このキイロウミコチョウがコンスタントに観察できる貴重なダイビングポイントだ。

東京湾湾口部にある明鐘岬がいかに奇異で特別な環境であるかは、昨年のハナデンシャ出没事件でも明白になっている。

さらに関東では極めて探索が難しいアユカワウミコチョウも出没が確認されているという。

ウミウシ好きには聖地ともいえる奇跡の海なのである。

 

 

 

 

 

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2010年1月25日

ゴシキミノウミウシ Cuthona diversicolor

 

 

 

ゴシキミノウミウシ Cuthona diversicolor

 

 

ゴシキミノウミウシ。

水路状になった明鐘岬のなかでも最も熱いウミウシ・ウォッチングポイントにいる。

水深6m前後、幅約1mの水路の壁には、明鐘の他のポイントでは出没することがない希少なウミウシが発見できる。

このゴシキミノウミウシもその一つ。

クロガヤにペアで発見することができた。

もしかしたら交接間際であったかもしれない。

いやいや・・・失礼いたしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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サクラミノウミウシ Sakuraeolis sakuracea

 

 

 

サクラミノウミウシ Sakuraeolis sakuracea

 

 

先日、ヨゾラミノウミウシの標準和名がすばらしいとブログに書いた。

このサクラミノウミウシも大変すばらしい標準和名がつけられていると思う。

仄かな桜色という表現がぴったりの透明感。

しなやかさや儚ささえも「サクラ」という言葉には秘められていると思う。

凛と伸びた触角は、気品と気高さを感じさせる。

花魁道中の人気舞妓が、襦袢を覗かせながらしなやかに練り歩く様子を思い出させる。

 

 

 

 

 

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2010年1月24日

千葉県鋸南町明鐘岬 奇跡の海のパワースポット

 

このブログでは、大瀬崎・大瀬神社が稀に見るパワースポットであることを、多々ご紹介してまいりました。

さらに大瀬神社(引手力命神社)と三嶋大社の関係、静岡県に点在する嵐山という地名と、東伊豆の引手力男命神社との関係、そして千葉県明鐘との結びつきを紐解いてきました。その記事をパロパロアクアティック主宰の魚地司郎さんが読まれ、「まさに関係があるのではないか」との貴重なご意見を頂戴しました。というのも、魚地さん曰く、明鐘の海は東京湾の中でも類稀な特別な海であり、周囲には見られない特殊な生態系があるということです。生態系の特殊さはパワースポット共通に見られる特徴です。早速、明鐘がいかに特別な場所なのかをご説明していきましょう。

 

明鐘の海の特殊性

1日のダイビングで数十種類のウミウシが観察できる比類ない海

このブログでご紹介してきたように、明鐘といえばウミウシが特に有名。ダイバーの中でもマニアックなウミウシファンたちが集うこの海は、単純にウミウシが好きというファンダイバーもいれば、深く生態を研究するマニア、あるいは専門的に研究されている研究者の方、博物館の有名な先生方、国公立大学の教授・助教授、珍しい海の映像を追い求めるプロのカメラマン、米軍関係者・・・あらゆる業界の方々が集まってくる不思議な場所です。

はっきりいって、この事だけでもパワースポットと言っていいかもしれません。ただダイビングを楽しむだけでは物足りなくなったら、パロパロアクアティックさんに出かけられてはどうでしょうか?眼から鱗・・・今までのダイビングはなんだったのか?というほどの拘りのガイディングを楽しむことができます。

ウミウシファンに支持されているウミウシ図鑑.com。こちらのサイトを見れば一目瞭然。明鐘で発見されたウミウシの数の夥しい事・・・。

冬のベストシーズンでは、1日のダイビングで40種類を越えるウミウシを観察することができる事も決して珍しくないといいます。豊富な種類と一言で言いいますが、内容的にはとても興味深く、はるか南方系のウミウシから、北方のウミウシが狭いこの明鐘岬一帯のエリアで観察することができるのです。これは非常に特別な事であるといわざるを得ません。

また非常に珍しいウミウシが出没することも見逃せません。昨年、一世風靡したハナデンシャから始まり、沢山の希少なウミウシがこの海域で観察することができるのです(もちろんいつも見れるわけではありませんが・・・)。

 

豊富な珊瑚

次に注目すべきは、東京湾屈指のソフトコーラルの群生地であるということです。

エダミドリサンゴ、キクメイシ、ニホンアワサンゴといった珊瑚たちが見事な珊瑚礁を形成している命の海です。

研究者からすればとても興味深い生態系だそうで、南方の珊瑚たちが豊富に育成しているほか、その北限となっているケースも少なくないそうです。我々がダイビングのためにエントリーする、渚の潮溜まりにはなんとキクメイシモドキ(Oulastrea crispata)という関東地方では非常に珍しい珊瑚がびっしりと成育しており、その北限になっているそうです。

 

 

東京湾 明鐘岬の珊瑚 

 

東京湾 明鐘岬のソフトコーラル 

 

 

東京湾 明鐘岬のソフトコーラル 

 

東京湾 明鐘岬のソフトコーラル 

 

東京湾 明鐘岬のソフトコーラル 

 

東京海底谷に直結する鯨道

 約2万年の昔。東京湾はまだ陸地であったそうです。その頃、古東京川と呼ばれる渓谷が存在し、これが後に海底に沈み、浦賀水道と東京海底谷となります。つまり、2万年前は数千メートルの高山だった場所が、今のゼロメートル地帯。深い渓谷の底だった場所は、2500mの深海を形成しているのです。

この東京海底谷に沿って、世界の3大海流である黒潮が東京湾に流れ込みます。この時、明鐘岬の南側にある「浮島」に黒潮がぶつかります。浮島は、直接、東京海底谷に直結する稀有なる場所です。

 

実はこの浮島周辺は、日本神話の原点であり、天皇家の墓とも呼ばれる神聖なる霊場です。紀元111年、景行天皇の息子、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が相模の国から上総の国へ船で渡ろうとするとき、海が突然荒れ狂ったといいます。その海を沈めようと自ら犠牲になり海に飛び込んだ妃(弟橘姫:オトタチバナヒメ)の亡骸がみささぎ島に流れ着いたとされています。「みささぎ」という言葉は天皇・皇后の墓を意味するそうです。(鋸南町勝山の歴史・文化案内書より)

海を鎮めるために女性が身投げをして鎮護するという話は、この弟橘姫にはじまり、以前このブログで記したことのある川崎の女躰神社(にょたいじんじゃ)の伝説にも見ることができます。

 

この浮島には、鳥居島、朝貢島、高塚角、天王塚、天王井戸、天王通りなどと、天皇行宮にまつわる遺跡が数多く残されているといいます。毎年7月には島まつりが行われるのですが、このお祭りは別名「鯨まつり」と呼ばれています。そう、この鋸南町には古くから鯨にまつわる伝説が語り告がれているのです。

 

鯨は東京海底谷に沿って東京湾に入り込みます。しかし、その先には「熱塩フロント」と呼ばれる潮目で作られた自然の結界が立ちふさがります。潮目は筋目(ストリック)と前目(フロント)の二つに分類することができ、熱塩フロントとは、神奈川県久里浜と千葉県金谷を結んだ位置にできる潮目のことで、くっきりと潮目が確認できるほどのはっきりとしたフロントができるそうです。ちなみに久里浜~金谷のラインは東京湾フェリーの周航路でもありますね。

 

浮島からこの熱塩フロントの間の海域は、江戸時代、鯨漁(いさな漁)がさかんに行われた特別な海域でした。現在では漁は行われておりませんが、多数の鯨がこの海域を遊泳していることが知られています。東京海底谷の神秘性は、NHKによって広く報じられたミツクリザメの繁殖活動にも現れています。

 

さてさて、明鐘岬の神秘性・特殊性を語るにはまだまだ調査が必要なようです。

浮島や鋸山、勝山の歴史名所、神社仏閣など調査範囲はつきません。

7月のお祭りを目標にこつこつと調べていこうと考えております。

 

続編をお楽しみに。

 

 

 

 

 

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ヨゾラミドリガイ Thuridilla vatae

 

 

 

ヨゾラミドリガイ Thuridilla vatae

 

 

スイートジェリーミドリガイ(Thuridilla albopustulosa)または、ヨゾラミドリガイではないかと思われる。

スイートジェリーの名前も素敵だが、「ヨゾラミドリガイ」だなんて、なんとロマンチックな名前なのだろう。

スイートジェリーミドリガイもヨゾラミドリガイも「ゴクラクミドリガイ科」のウミウシである。

このゴクラク(極楽?)という名前も凄い。

 

黒~紫にグラデーションする美しいボディに、天の川の一部が照らし出されているかのような斑紋。

この斑紋は、固体毎に模様が異なるようだが、じっと見ると何かの星座を表しているような、そんな気持ちにさせられる。ふと思ったのは、天の川近くトレミーの48星座の一つであるいるか座(海豚座、Delphinus)である。

「トレミー48星座」とは、クロード・トレミー(ギリシアの植民地だったアレクサンドリアに生きた2世紀の博学者、数学者、天文・占星学者、地理学者)が定めた星座のこと。

いるか座もこのトレミーの48星座に含まれている。

ギリシャ神話の世界のイルカは極めて神聖な生物だった。 海神ポセイドンの使者として、女神アンフィトリーテへのメッセンジャーを務めたり、コリントスの宮廷音楽家アリオンを海から救ったりと、いかにもイルカらしい神話が残されている。

 

ヨゾラミドリガイの紋様を見ていたら、そのいるか座の配置に似ているなあと感じた。

 

 

 

いるか座

Stella Theater Lite Ver.3.01 Toxsoft

 

 

 

いるか座とヨゾラミドリガイ

 

いるか座は、日本では夏の星座だ。

彼がまだ、ベリンジャー幼生として海面を漂っているときに、美しい星空が彼らの身体を照らし出し、焼き付けた記憶なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

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2010年1月23日

Phestilla minor ニホンアワサンゴを食するウミウシ

 

 

 

ニホンアワサンゴ

 

 

 ニホンアワサンゴ。

千葉県保田海岸 明鐘岬の海にはニホンアワサンゴをはじめとする、多くの種類のソフトコーラルが生息している。

サンゴの天敵といえばオニヒトデを思い出すが、ウミウシの仲間でもサンゴを食する物がいる。

ただ、不思議なのは、ソフトコーラルを食するウミウシは、何種類かあり、それぞれ食するソフトコーラルの種類がはっきりと決まっているということだ。

今回観察した「Phestilla minor フェスティラ ミノール」は、ニホンアワサンゴを食していた。冒頭に明鐘にはニホンアワサンゴがたくさん生息していると記したが、不思議なことに、どのニホンアワサンゴにもフェスティラ ミノールが寄生しているわけではなく、ごく一部のニホンアワサンゴに、たくさんのフェスティラ ミノールが群がるようにして食い散らかすのだ。したがって、その狙われたニホンアワサンゴの群落は。約2週間ほどで真っ白な骨格だけにされてしまう。

 

 

 

Phestilla minor フェスティラ ミノール

 

上の写真は、完全に食い尽くされたニホンアワサンゴの骨格の上を這うPhestilla minorである。

もともと、このPhestilla minor自体は珍しいウミウシで、明鐘でしょっちゅう見るような普通種ではない。

そのPhestilla minorがどうして、急にこのニホンアワサンゴに集まってきたのか不思議でならない。

想像だが、集まってきたのではなく、このニホンアワサンゴの群落の中で増殖したのではないのかということだ。

 

 

Phestilla minor 

 

たくさんあるニホンアワサンゴのどれもが被害にあっているなら、Phestilla minorが急に増えたという解釈ができるが、その一箇所だけだということは、その場所に何らかの理由で幼生が流れ着き、そこで繁殖したのではないかと見るほうが自然ではないかと思う。

 

INDO-PACIFIC NUDIBRANCHS AND SEA SLUGS (Terrence M. Gosliner, David W. Behrens, and Angel Valdes)」のP.371には、サンゴの骨格を食べ、白い半円の卵塊を形成すると書いてある。

なんとサンゴの骨格から吸収したカルシウムを使って卵の塊を作るというのか!?

なんと凄いウミウシである。

 

 

 

 

 

 

 

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エムラミノウミウシ Hermissenda crassicornis

 

 

 

エムラミノウミウシ Hermissenda crassicornis

 

 

 エムラミノウミウシの眉間の文様。

一文字の刀傷のように見える。

しかし、この一文字を見るとなぜか、東ローマ帝国十字軍のイメージが浮かび上がる。

オレンジにブラウンで縁取られた文様は実に美しく、気高い。

十字軍は良くも悪くも世界史に多大な影響を与えたが、その多くはキリスト教の教義の名における政治的な制圧活動だった。

エムラミノウミウシはそんな人間のおろかな歴史には関係がないが、ここ明鐘の海で見たエムラミノウミウシの気高さは、1000年前の血気に満ちた若者が正義感に燃えていざ旅立とうとする、十字軍に志願する若者たちの気迫を重い起こさせる。実際の十字軍は、そんな気高き印象とは裏腹に略奪と陵辱、虐殺の群集だったようだが、人間のそんなおろかさとは別に、エムラミノウミウシが纏っている勇者の鎧は美しく輝いていた。

 

 

 

 

 

 

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伊豆の死滅回遊魚 チョウハン Chaetodon lunula

 

 

 

 

伊豆の死滅回遊魚 チョウハン Chaetodon lunula

 

 

 

水温13度はさすがに冷たかろう。

ハワイやインド洋を主たる棲家とするチョウチョウウオの仲間「チョウハン」の幼魚である。

本来は身体の上半身が真っ黒から、黄色に変化していくのだが、この子はまだ黄色くなりかかった若魚である。

見て分かるように、せっかく黄色がかって大人びてきたというのに、茶色くくすんでしまった。

よっぽど寒いのだろう。

まだ水温の高い秋に発見できても、すばやく泳ぐのでなかなか撮影できないのだが、皮肉にもこうして弱弱しくなった姿を撮影することになろうとは。

どうにか生き延びて欲しいと願うのだが、それもまた虚しい願いか・・・。

伊豆の冬は美しい海の色とは裏腹に、魚たちにとってはやはり厳しい試練の冬なのである。

 

 

 

 

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2010年1月22日

コシオリエビの仲間 Galatheidea sp.

 

 

 

コシオリエビの仲間 Galatheidea sp.

 

 

 

コシオリエビの仲間をナイトダイビングで発見した。

とても臆病なコシオリエビは、もちろん夜でなければなかなか見つけられないし、見つけることができてもライトを当てるとすぐに奥に引っ込んでしまう。しかしその愛嬌のある姿は、とてもフォトジェニック。音楽で言えばシューベルトのピアノソナタといった雰囲気。

厳格で、控えめでそれでいて愛嬌があってかわいい。

だが容易に聴きこなす事はできず、楽譜の流れや主題と変奏の意味を深く理解しなければ楽しむことができない楽曲だ。

そんな雰囲気が、このコシオリエビのイメージとぴったりに感じてしまう。

砂を巻き上げないように浮力を保ったまま撮影したが、3カット目には既にその姿はなかった。

やはり彼はシューベルトだな・・・

じっくり聴くことができなくてもまあいいか・・・そんな感じにさせられる。

 

 

 

 

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ナガハナダイとミナミハナダイPseudanthias elongatus Luzonichthys waitei

 

 

 

 

ミナミハナダイ Luzonichthys waitei

 

 

大瀬崎 先端の水深50mオーバー。

久しぶりの大深度。正確な水深はここでは書くのをやめておこう。

50mオーバーの水深に潜るのは、なんと20年前のトラック(現在のチューク)以来だろうか。

 

大深度ダイビングには、ちょっと不安を感じるトラウマがある。56mの水深で流れに逆らって泳いだことがあるのだが、あの時はまだ経験本数も100本少しで、何がなんだか分からないまま、ただひたすら水面を目指して泳いだ記憶がある。今考えればよくも減圧症を引き起こさなかったものだ。ダイビングコンピュータなんて誰も持っていない、というか、発売されていたのかな?そんな時代だったから、誰もがダイブテーブルを水中で読むか、頭の中の記憶だけを頼りに時計と深度計を見比べていたものだ。それに比べれば、とても便利な時代になった。ダイブテーブルの引き方なんて覚えていなくても、全てコンピュータがやってくれる時代になったのだ。

 

実は、この日、朝から先端の深場を狙おうという計画をしていて、とても楽しみだったのだ。20代に経験した恐怖感を克服する勇気はあったのだが、もしものときの体力には自信がなかった。それでも楽しみだったのは、4桁の経験本数を積み重ねて、幾分リスク判断ができるようになったことと、何よりも大瀬崎のハナダイの美しさに惚れ込んでしまったからなのだ。

 

50mを超えればミナミハナダイの群れに合えるかもしれない。朝からウキウキしながら14リッタータンクをBCにセットしていた。先端ポイントからのエントリーは楽チンだが、時として流れがあり、トラウマが蘇ってくることもある。でもこの日は全く流れもなく、エントリーから数分後には、目的の場所にたどり着くことができた。伊豆海洋公園のブリマチで深く潜ったとき、あれは46mだったが、真っ暗闇だった記憶がある。パラオでそれこそ振り切れんばかりの水深に潜ったときは、逆にどこまでも真昼の陽光を感じることができた。今日の冬の大瀬崎では、透き通った冷たいブルーの光の矢が海底深くまで真直線に突き刺しているかのようだ。

 

思ったとおりミナミハナダイが混ざった小さな群れに出会うことができた。しかし、速い。ミナミハナダイは体長が4~5cmと小さい上に移動が速い。同じ場所にホバーリングするキンギョハナダイや、以外にのんびり屋のサクラダイとは訳が違う。ファインダーで捕らえたと思った瞬間、既に画角から抜け出している。これは以外に厄介だぞ・・・そう思いながらようやく数カットの手応えを感じた。(後からこうして見てみると全然撮れていないが・・・)

 

あっという間に時間が過ぎ去り、既にコンピュータはDECOの点滅。酔いが始まったのか、幾分呼吸が遅くなってきているようだ。もうこの位にして上がろう・・・そう思ったとき、ナガハナダイが挨拶に来てくれた。

 

 

 

 

 

ナガハナダイ Pseudanthias elongatus 

 

 

なんとも美しい天女の降臨。

大瀬崎のハナダイは特に美しい。

東伊豆で見るハナダイと比較して、色濃く輝いて見えるのはなぜなんだろう。

東伊豆では青物・・・タカベやアジ、イナダが美しいと思う。

そうか、太陽が差し込む角度が違うのかな?

そんな事を考えながら浮上を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

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早朝の大瀬神社 神池の青龍

 

 

 

 

早朝の大瀬崎

 

 

 

真冬の大瀬崎湾内に朝日が昇る。

夜の帳が解け、一気に空気の緊張感が高まっていく。

この瞬間こそが、ここ大瀬崎のパワースポットが最高潮にエネルギーを放出する時間帯だ。

急いでカメラを手に持ち、マンボウ横のスロープを駆け上がって、外海に向かう。

もちろん旭日に輝く、霊峰富士を拝みに行くためだ。

 

 

 

早朝の駿河湾と霊峰富士

 

 

柵下のエントリーポイントまで一気に走っていく。

この場所でなければ、富士山を撮影するのには都合が悪い。

大瀬神社に向かう外海の道沿いには電線がひかれており、富士山を狙う画角に電線が写りこんでしまうのだ。

遠く南アルプスを望む絶好の撮影ポイントだ。

大瀬崎の中で、最も大好きな場所のひとつ。朝の緊張した空気を肺いっぱいに吸い込み、先週までの都会生活で綻びてしまった心を癒していく。

マイナスイオンなんて単純なものではない。

この空気が運んでくるエネルギーは、駿河湾の2500mの深海から湧き上がる深層水のミネラルと、ビャクシンの森が作り出すマイナスイオン、そして大瀬神社の陰陽のエネルギーが織り交ざった命のエネルギーなのだ。

 

 

早朝の大瀬神社

 

ふと、何かを感じて振り向くと、大瀬神社に朝日が差し込みつつあった。

この特別な雰囲気がつたない写真で伝わるだろうか。

導かれるように自然に足は大瀬神社に向いていくのである。

 

 

 

大瀬神社の鳥居 

 

 ダイビングハウスマンボウさんの愛犬「スティービー」と朝の散歩である。

 

 

 

大瀬神社 絵馬殿

 

 

大瀬神社 

 

 

大瀬神社 本殿

 

 

大瀬神社から岬方向に歩いていくと、神秘のスポット「神池」がある。

大瀬神社の由来によれば、大瀬神社本殿が「陽」の気を持ち、神池が「陰」の気を持っているのだそうだ。

詣でるときには必ず、本殿と神池の両方を詣でたほうが良いと伝えられている。

 

 

大瀬神社 神池

 

 大瀬神社 神池

 

真冬だというのに、紅葉が全く散らずに輝いている。

伊豆の七不思議といわれる「神池」は本当に不思議な場所だ。

 

神池には青龍が棲むと伝えられている。

青龍といえば、東方青竜とも呼ばれる東方を守護する四神のひとつだ。

青龍の名前から青い色を想像するのだが、「青」という文字はもともと緑色を意味している植物を表す言葉ということだ。

長い舌を出した竜の形とされる。

青は五行説では東方の色とされる。

また、青竜の季節は春とされている。

別の名を東海青龍王敖広と呼ばれる。

 

さて、実際の神池には数千とも言われる野生の鯉が棲んでいる。

はたして龍はどこにいるのだろうか?

 

大瀬神社 神池の野鯉

 

青い龍。

青とはもともとは、緑色を意味しており植物を表すという。

長い舌を出した龍の姿・・・。

天文学的には、二十八宿の東方七宿(角宿・亢宿・氐宿・房宿・心宿・尾宿・箕宿)をつなげて竜の姿に見立てたことに由来する。

北斗七星を龍に見立てた?・・・いや・・・まてよ・・・

 

ビャクシン

 

朝日に照らされたビャクシンを見た瞬間、これこそが「青龍」の正体ではなかろうかとひらめいた。

青き龍の姿をした植物。

東方を守護し、春を意味する吉神。

大瀬崎の神池に宿る青龍とは、柏槇の事ではないか。

 

陰陽五行思想(おんみょうごぎょうしそう)によれば、十二天将(じゅうにてんしょう)の前五を司る吉将が青龍であり、なんと木神を意味するという。そう、木なのである。生きた木は木陰を作り、風よけとなり、心に潤いを与える。そのため人家周辺に木を植える事は世界に広くおこなわれている。特に大きな樹木を神聖視して、これを祭り崇めることが太古より行われてきた。その巨木神話のひとつが、この大瀬神社の青龍=ビャクシンなのかもしれない。

 

大瀬崎の早朝に見たビャクシンは、まさに天に昇る勢いで駆け上がる青き龍の姿をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2010年1月21日

ソメンヤドカリに着く「カクレエビ亜科の一種」 Palaemonidae sp.

 

 

 

ソメンヤドカリに着く「カクレエビ亜科の一種」 Palaemonidae sp.

 

 

 

大瀬崎でのナイトダイビングでは時として予期せぬ生物に出会ったりする。

エントリーしてまだ数分も立たないうちにハリセンボンの大群に囲まれるかと思いきや、今度は巨大なソメンヤドカリ。

ハンドボールの球ほどの大きさがあるのではないかと思える大きなソメンヤドカリが目の前を横切った。

 

「!?」

 

何かが光った?

 

その正体がこれであった。

まだ標準和名がないカクレエビの仲間である。

とても珍しい生物だとガイドのY君に聞かされ有頂天。

肝心の写真はいまいちだったが、突然の掘り出し物に喜んだ。

 

それにしてもこのカクレエビ。

ソメンヤドカリに乗っていったいどこまで行くのか?

真っ暗な暗闇の砂地をかなりのスピードで移動する様は、「ハウルの動く城」を思い出させた。

ソメンヤドカリに着くイソギンチャクは、カルシファーか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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うっかりカサゴ Sebastiscus marmoratus

 

 

 

イソカサゴ Scorpaenodes littoralis

 

 

 

 

 

イソカサゴ Scorpaenodes littoralis

 

 

 

イソカサゴ Scorpaenodes littoralis

 

 

 

 

カサゴの幼魚

 

 

 

カサゴ

 

 

 

カサゴの仲間の写真を集めてみた。

いつも見慣れた顔ぶれだけど、どうも通り過ぎることができずにシャッターを切ってしまう。

 

ウッカリカサゴという魚がいる。

本当は同じカサゴだと思われているのだけれど、深海に住んでいる体色が真っ赤に染まったカサゴを「ウッカリカサゴ」として別の呼び方をしている。

 

僕の場合は「うっかり」撮影しちゃうので、「うっかりカサゴ」なのだな・・・。

 

 

 

 

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トゲモミジガイ Astropecten polyacanthus

 

 

 

トゲモミジガイ Astropecten polyacanthus

 

 

 

 

こんな風に砂地を歩くヒトデを見たら、正気でいられますか?

冗談はさておき、夜のヒトデは動きが活発だ。身体をよじらせ、折り曲げ、信じられないようなポーズをとってみせる。

夜のヒトデのパフォーマンスを見てしまったら、きっと貴方もヒトデのファンになってしまうでしょう。

 

 

 

 

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大瀬崎の神秘 癒しのパワースポット

 

 

 

 

 

 

大瀬崎から見た駿河湾の夕陽

 

 

 

大瀬崎で週末を過ごすときには、いつも駿河湾の夕陽を見に行く。

冬の大瀬崎では、サンセットタイムにはほとんど人影がない。

しかし、毎日がこんなに劇的なのだとしたら、都会での生活はいったい何なのだろうかと疑問に思うほどの美しい夕陽を見ることができる。

 

静かに、しかし冷たい空気を緊張感でいっぱいにしながら太陽が沈んでいく。

いや、沈んでいくと言うよりも、むしろ海を真っ赤に染めながら溶け込んでいくと言ったほうが良かろう。

 

一瞬たりとも眼が離せない。

たったの数分間なのだけれど、その時間は、とても長く感じられる。

遠い水平線には蜃気楼が現れ、御前崎の先端が浮島のように浮遊してくる。

真っ赤な太陽は、光り輝くマントを翻し、伏せ入るかのように海と一体化していくのだ。

 

 

夕暮れの大瀬崎とイカ釣り船 

こんな劇的な数分間を味わうことができるのであれば、人々がこの大瀬崎を「神秘のスピリチュアル・パワースポット」と呼んだとしても不思議はあるまい。どんなに名高い聖人であっても、この数分間の出来事を凌駕するような悟りは与えられまい。いや、それどころかどんなに人生に疲弊した人でも、この数分間を経験することができれば、その後に襲い掛かる闇の恐怖が自らの不幸など、これほどのものであったかと脱却することができるほどの体験ができるに違いない。

 

太古の昔から、自然が人類に与えてきたエネルギーとは実はそういうものなのだ。

 

自らの立ち位置を振り返らせ、省みさせる。そしてどんなに疲れきった心であろうとも、夜の恐怖というものは普遍であるという事実をつきつけ、生あるものはその恐怖には決して打ち勝つことができないという、絶対的な負の力を知らしめるのだ。その恐怖を知ることができた人間は、毎日の社会生活で身の回りに起きる事象が、いかに些細なことであるのか、また、些細であるがゆえに経験し、乗り越えていかなくてはならない、そうしなければ、数時間後には必ずや訪れることが約束された、朝の旭日を拝むことはありえないのだと知ることができるのである。

 

神とはそういう存在なのである。

そう、この地には、間違いなく神が宿っているのである。

 

 

 

 

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2010年1月20日

クロシタナシウミウシ Dendrodoris nigra

 

 

 

クロシタナシウミウシ Dendrodoris nigra

 

 

 

大瀬崎湾内では思いも寄らない場所に生物が生息している。

何もない砂地の海底をライトを当てながら、くまなく、それこそ眼を皿のようにして生物を探す。

30cm四方の空間をじっくりとトレースしながら探索するのだ。

2月も近づいてくるとフクロノリやその他の海藻類が芽吹きだし、何もないと思った海底も良く見るとグリーンに彩られつつあるのが分かるはずだ。

 

僕はいつも、こうして生物を探すときには、頭の中で音楽を感じている。

この日は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ハ短調Op.18。

チェコ・ナショナル交響楽団、ケマル・ゲキチの流れるようでかつ冷酷で正確なピアノ演奏が、終始、頭の中を流れていた。

リボル・ペシェク(Libor Pesek)の指揮するこの演奏は、従来のピアノ優先の協奏曲スタイルを脱却。

まさに協奏曲という古いようで新しい、未知のハーモニーを描いてみせる。

 

調子のいいときのダイビングでは、いつも第一楽章のフォルテッシモが強烈なドーパミン効果をもたらし、僕の中枢神経を陶酔させるのだ。クロアチア出身のピアニスト、ケマル・ゲキチのピアノの響きは、これまでの、どんなピアニストよりも透明な音を奏でる。ショパンの演奏では第一人者だが、ラフマニノフを弾かせれば現代では右に出るものがいない。いつも黒いベルベット地のジャケットを着て、長い髪をポニーテールのように束ねた姿が特徴的だ。悔しいくらいに強烈で妖艶なオーラを放つ男前のピアニストである。

 

この日、大瀬崎の湾内でラフマニノフを歌いながら見つけたウミウシが、このクロシタナシウミウシ。

真っ黒でマットな色調がベルベットを思い出させる。

 

やがて第二楽章が流れ始めると、それは宙に浮かび、重厚なグランドピアノの存在が突然消え去り、煌めく星くずのような旋律が確かな実態感を伴いながら輝き始めるのである。

第二楽章最後の分散和音の響きが消えるか消えないかのタイミングで、第三楽章が始まった。

木管とピアノソロの掛け合い。

世界中の誰よりも正確で美しく装飾音を奏でるケマル・ゲキチのそれは、実はしなやかでありながら力強い打鍵に支えられているのだ。

チェロが主題を奏でると、オーボエとピアノがもつれ合うように、呼びかける。

 

小さなシンバルの合図で第二主題が展開される。

金管が脳天を貫くような鋭さで煌めいた瞬間、海には流れが生じ、恥らうほどの透明さで僕を虜にしたはずが、一瞬にして淀みはじめるのだ。

 

うねりと躍動感。

押し寄せる波とざわめきの水泡。

 

まるで、これが本当の姿であると主張するかのように混沌とした流れと濁りが身を包む。

聞きなれた第一主題は既に過去のメッセージ。

転調を重ね、弾ける様なトリルで結ばれながら深みをさかのぼっていくと、そこはもう光だけが眩く、大いなる生命の懐に導かれている。

いつの間にかピアノはオーケストレーションの中に溶け込み、音の渦となって一気に、そう、まさしく一気に昇華するのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2010年1月19日

ムナテンベラ Halichoeres melanochir

 

 

 

ムナテンベラ Halichoeres melanochir 

 

 

 

水温13度の伊豆大瀬崎。

死滅回遊魚と呼ばれる魚たちにとって、運命のその日がやってくる。

このムナテンベラは、大瀬崎では数年に一度、黒潮に乗って現れる季節来遊魚だそうだ。

この写真の固体は昨年の秋に台風によって南から運ばれてこの地にやってきたもの。

勢い良く泳ぎ回る元気はもう既になく、身体を丸めてしまい、胸鰭だけで一生懸命浮力を保とうとしている。

 

岩の隙間の奥深くに入り込んでしまっているので、撮影が難しかった。

ところが、フォーカスライトで照らしてあげると、なんとこっちに振り向くではないか。

 

なぜ身体が痛いのか、自分の身に起こっている現象すら理解できないであろう彼が、その意味を教えて欲しいかのように見つめる。

「もうすぐ楽になれるよ、君の命は永遠だよ・・・」と心でつぶやいても何も通じない。

 

そして、こうして彼の写真を見ながらブログを書いている。

何人かの人が、きっとこの記事を読んでくれるだろう。

そして、その時にはもう既に、彼はいないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2010年1月18日

ハリセンボンの大量発生 Diodon holocanthus

 

 

真冬の様相の大瀬崎。

日中、湾内でのダイビングで一匹のハリセンボンの死骸を発見した。

 

ハリセンボン Diodon holocanthus

 

 

ハリセンボンはもともと南方系の魚であるため、当然冬の伊豆では生息することができない死滅回遊魚である。

この日の大瀬崎の水温は、13~14度。

先年の秋に台風とともに流されてきた季節来遊魚の多くが、生命機能を維持することができず、蝋燭の火が消えるように静かに姿を消していくシーズンである。ダイバーに人気が高いハリセンボンも、この寒さでは耐えることができなかったのだろう・・・愛嬌のある顔つきや目つきの面影もない屍骸に、何とも言えない寂しさを感じ、このカットを撮影した。

 

ところがである。

 

その日の夜、ナイトダイビングに行こうと、大瀬崎湾内のマンボウ桟橋でエントリーした。

そこで信じられないような光景を眼にしたのだった。

それは、水面に夥しいほどの数のハリセンボンが群れる様子であった。

 

ハリセンボンの大量発生

 

 

数十、いや、数百のハリセンボンが塊となって波打ち際に押し寄せてくるのである。

産卵活動でも始めるのか?

いや、どの固体も体長が10cmにも満たない、未成熟な固体である。

まさに大量発生によって異常繁殖した群れが、どういう理由なのかこの大瀬崎に流れ着いたのだ。

 

 

 

 

ハリセンボンの大量発生 Diodon holocanthus

 

ハリセンボンの群れにライトを向けると、真っ白な腹の部分が、幾重にも重なって光る。

その様子は、異様であり、光が届くどこまでも先まで群れが続いているようであった。

そして、光に気がつくと、一斉にライトに向かって泳いでくる。

あっという間にハリセンボンに囲まれてしまうほどである。

大光量のビデオライトをつけたハイビジョンカメラを構えていたら、きっと数分で、ライトの前はハリセンボンに埋め尽くされたのではないだろうか?

 

大瀬崎 ハリセンボンの大量発生 Diodon holocanthus

 

 

水産事情に詳しい方にお聞きすると、今年はハリセンボンの大量発生による漁業被害が多発しており、先日も川奈漁港で4トンものハリセンボンが定置網に入り込み大きな被害をもたらしたのだという。ハリセンボンは南シナ海や東シナ海で生まれ、黒潮や対馬海流に乗って日本列島を北上してくる。夏の暖かい水温の時期には、沿岸部に寄り付き、我々ダイバーの目を楽しませてくれるのだが、15度がぎりぎりの水温らしく、15度を割り込むと死滅してしまうのである。

しかし、成魚になったハリセンボンならまだしも、5~10cm程度の未成熟なハリセンボンが、どうして大量発生し、そして大量に流されてくるのか。そのなぞはまだ解かれていないのだという。

 

寒さに耐えながら集団で寄り添いながらも、大瀬崎の旅館街のライトに釣られて波打ち際に寄ってきたのだろう。そしてダイビングライトが照らす一筋の光を頼りに集まってくる姿は、すでに寒さで意識がない中で、なんとか生き延びようとする必死の行動であったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

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2010年1月17日

セイタカハナズトガイの交接 Velutina conica

 

 

冬の東北の海。

 

芳醇の海という言葉がまさに似つかわしい、命の海。

 

 

運悪く、連日の強風のためウネリと濁りが残った志津川の海は、真っ暗で緑色をした冷たい海だった。

水温7度という状況で、しかも前を泳ぐダイバーのフィンすら見えない透視度で、いったい生物が発見できるのだろうかという不安感。

フードから露出している頬とあごの部分は、既に冷水にさらされピリッと緊張したまで痛みすらなく、感覚が麻痺してくる。

不思議と呼吸は穏やかに保つことができ、自分はきっと冷たい海に向いている体なのかなと考えた。

 

宮城県南三陸町のダイビングサービスといえば、唯一無二で日本全国に名を轟かせる「グラントスカルピン」である。彼の独特のガイディングスタイルは、お客を迎えるサービス精神の塊から生み出てきたものだと思える。

まず一般ダイバーがこの志津川の海に始めて潜ったところで、何も発見することはできないだろう。

毎週のようにミリ単位のウミウシを探している私でさえも、一人で潜ったら、まず間違いなく撃沈。

良くて岩の隙間にいる小さなヤドカリを発見することができるくらいであろうか。

そう、この志津川で生きる生物たちは、伊豆やその他の地域の生物とはちょっと違った場所にいる。

オーバーハングした岩の下側、しかもフジツボの貝殻の中だったり、岩と岩の隙間・・・しかもある特定の水深の一帯だけであったり、蔽い茂る海草の根元や茎の部分であったり・・・。

 

グラントスカルピンを主催する佐藤長明氏は、志津川の海を調査し続けている。

もはやそのガイディングの凄さは、他の追随を許すことないのに調査活動と生物の研究、ダイビング機材の研究に明け暮れているのだ。

この日、我々がクチバシカジカの抱卵に釘付けになっている間にも、次々と被写体を発見する。

数分前に自分自身で探してなにもいないなぁと通り過ぎた場所でさえ、見事に大物を発見するのである。

 

セイタカハナズトガイという貝の名前すら知らなかった。

暗く冷たく濁った海の底で、美しく鮮烈に光り輝く命の粒を見たようだった。

 

 

セイタカハナズトガイ

 

 

セイタカハナズトガイの交接 Velutina conica

 

セイタカハナズトガイの交接 Velutina conica 

1cmほどの巻貝の一種であるという。この写真は透明な巻貝の雰囲気が出せるように、若干、トーンを押さえ気味にしているけれど、実際に海の底で岩の隙間でこの巻貝を見たときには、まさに生きる宝石を見つけたかのような感動を覚えた。

怪しく艶かしく光る腹足を絡ませあう交接シーンは、生きる力のまぶしさを見るようなエネルギーを感じ、冷たいはずの海がなぜかほのかにあたたかく感じられるほどの説得力がある。

 

彼らの世界観というものはいったいどんな世界なのだろう。

 

眼でものを見て判断することがない彼らは、僅かな臭いで(実際には臭いをかぐというより本能で体感すると言うべきか・・・)世界を感じている。

人間には到底真似ができない、僅かな変化を感じ取り、自分のパートナーをこの広い海から見つけ出す能力を持っている。

そのパートナーとの出会い、その事そのものが奇跡といっても過言ではない。

だからそんな奇跡の中で命の絆を紡いでいく彼らは、愛情というものが存在しない。意味がないのだ。

 

なぜなら、生きていることそのものが「アガペーαγάπη agápē であるからなのだから。

海の底で光る、この宝石を眺めているうちに、真理のひとつを悟ったような気持ちになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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2010年1月16日

イソウミウシ属の一種 Rostanga sp.

 

 

 

キイロクシエラウミウシ Doriopsis granulosa

 

 

志津川の海で発見できるウミウシはちょっと面白い。

どう面白いかというと、なぜか皆、大型なのである。

小型のウミウシが見つけられないでいるだけなのだと思うのだが、発見できるウミウシは小さくても4cm。

大きいものでは10cm近いものも見る。

 

このイソウミウシの一種は、キイロクシエラウミウシではないかと思ったのだが、どうだろう?

キイロクシエラウミウシもこの写真のように被覆状カイメンを捕食するのだが、名前の通りの櫛状の鰓がこの固体には見られない。

なので、同じドーリス系のウミウシの仲間で、イソウミウシが一番近いのではないかと思った。

このウミウシも志津川の芳醇な海で育って、4cm近くの大型であった。

 

 

 

 

 

 

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2010年1月15日

スナビクニン Liparis punctulatus

 

 

 

スナビクニン Liparis punctulatus

 

 

クサウオの仲間、スナビクニンである。

ビクニンとは「比丘尼」の事を指すのであろうか?

比丘尼とは仏教用語で女性の出家修行者のことを指す。

東北の冷たい海の底で、比丘尼に会うというのはなんとも意味深ではなかろうか。

ちなみにこのスナビクニン。

小さな頃はとてもかわいいのだが、成長するにつれて色合いが濃くなり、クサウオらしい凄みが出てくる。

幼魚の頃は、透明でさらに可愛らしいのだという。

今年の春には、是非、出家したての比丘尼様にお会いしたい。

 

 

 

 

 

 

 

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2010年1月14日

フサギンポの抱卵とケムシカジカの卵 Chirolophis japonicus

 

 

宮城県南三陸町志津川では、フサギンポ(Chirolophis japonicus)を観察することができる。オオカミウオほどではないけれど、頭でっかちで大きな顔面は、強烈なインパクト。

 

フサギンポ(Chirolophis japonicus)

 

 このフサギンポが抱卵しているというので早速観察してみた。水深18mくらいの水底にある岩礁帯の窪みに彼は巣穴を設けていた。体長が30cmから大きいものでは1mを超えるものまでいるが、この固体は40cmほどの中型のもののようだ。卵がどこにあるのか探してみると、なんと岩の隙間からさらに20cmほど奥まった岩盤の壁に産みつけられている。

 

 

フサギンポ Chirolophis japonicusの抱卵

 

フサギンポの顔の大きさから判断すると、卵の大きさは直径が1cm以上あるのではないだろうか。とても大きい。アイナメやクジメの卵が数ミリという大きさだったから、この大きさは只者ではない。胸鰭を大きく広げて、卵を守っている様子だ。たまに胸鰭を仰いで新鮮な海水を卵にかける姿がほほえましい。

 

フサギンポ Chirolophis japonicusの抱卵

 

トリミングして拡大してみた。もう幼魚の眼が見えている。この小さな子供たちが大きく育ってくれることを祈りたい。

 

 

ケムシカジカの卵

 

ケムシカジカHemitripterus villosusの卵

 

こちらは、ケムシカジカの卵。先ほどのフサギンポの巣穴近くの岩礁帯に産みつけられているのだが、フサギンポが水底近くの巣穴に産まれているのに対し、このケムシカジカの場合は、同じ岩礁帯でも水底から1m以上も上で、しかもオーバーハングした出っ張りの隙間奥に産み付けられていた。

 

ケムシカジカは、やはり大型になるカジカの仲間で、フサギンポ以上に顔がごつい。普段生息している場所は水深100mより深い場所と考えられているが、産卵のためにこんな浅場まで上がってくるのだ。卵の量があまり多くないのではと思うのだが、ひょっとしたら数箇所に分かれて産卵しているのだろうか。だとしたら、雌雄が何度も放精~産卵していることになり、産卵現場を目撃することもあるかもしれない。しかし、これまでその現場が撮影されていないということは、夜間に行われている可能性が高いのではないだろうか。一度、観察してみたいものである。 

 

 

 

 

 

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2010年1月13日

ダンゴウオ Lethotremus awae

 

 

 

ダンゴウオ Lethotremus awae

 

 

 

宮城県南三陸町志津川の海。

クチバシカジカの生息が国内で唯一確認されている貴重な海である。その志津川は、カムチャッカ半島から流れ下る親潮(千島海流)と南太平洋から上ってくる黒潮が混ざり合い、芳醇な環境が生み出される特殊な海域にある。だから志津川の湾内は牡蠣の養殖がとても盛んに行われており、秋には志津川市内の川にたくさんのシロザケが遡上してくる。

その志津川で、初めてで唯一のダイビングサービスを運営しているのが「グラントスカルピン」である。このグラントスカルピンさんの店名にもあるようにクチバシカジカが観察できるという口コミで一気にその名を全国に轟かせることになったのだが、実はさらにこの地を有名にしているのがダンゴウオなのである。

上の写真は、正真正銘のダンゴウオである。ダンゴウオの体色と体表の突起の変化は数日でがらっと変わってしまうほど、ドラスティックだそうだ。生活環境や水温、周囲の海草やカイメンなどに真似て、体色を自由に変化させることができる、忍者のような魚だ。

 

小さいということも理由の一つだが、このダンゴウオをうまく撮影するのが、これが結構難しい。その可愛らしい表情がなかなか表現できないのだ。特にこのピンクのダンゴウオは、唇が紫色で、間違うといじけた様な寂しい顔になってしまう。この日も何度もストロボをたいて、体色に色合いを出そうと試みていた。というのも、先日、大瀬崎でのハナダイ撮影で気がついたのだが、全ての魚がではないけれど、一部の魚はストロボをたくさん浴びせると、どうも興奮するのか体色が良くなってくるように感じられるのだ。体色に明るさが出てきたころ、ふっと口元が緩む瞬間があった。その瞬間に撮影したのがこのワンカット。ちょっとまだ、表情が硬いよね。

 

 

 

 

 

 

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2010年1月12日

志津川の海 ヒナムシャギンポ Alectrias sp.

 

 

ヒナムシャギンポ Alectrias sp. 

 

 

正式な和名がまだついていないギンポの仲間です。ヒナムシャギンポとしておきましたが、定かではありません。普段はフジツボの巣穴に隠れているのですが、グラントスカルピン 佐藤長明さんのガイドの賜物で運良くみることができました。

体長が10cmほどの細身のボディは、明るく美しいピンク色をしており、真っ赤な海草の中に紛れてしまうと姿がはっきりと判別できなくなってしまいます。濃いモスグリーンのカイメンが張り付いた岩の上に、タイミング良く出たときに、やや露出オーバー気味に撮影し、RAW現像時に露出調整をすることでこのように真っ黒なベルベットのような地に横たわったかのような雰囲気が出せました。(ちょいと砂粒は消しましたけどね)

この固体は雄だそうで、近くに雌もいたのですが、ペアでの撮影は残念ながらなり得ませんでした。二匹の蛇が絡みつくようなシーンを期待していたのですが、そうそう、こちらの思い通りには動いてはくれません。

 

 

 

 

 

 

 

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2010年1月11日

北の海の女王 タツノオトシゴ Hippocampus coronatus

 

 

 

 

タツノオトシゴ Hippocampus coronatus

 

 

 

志津川の海の女王に会ったかのような妖艶な姿であった。

ウネリに身体を預け、流れるようにしなやかに漂うその姿。

ファインダー越しに眼が合うと必ず後ろを向いてしまう。

竜王の末裔、北の海の女王らしく写せないかと何度もシャッターを切ったが、なかなか思うような妖艶さが出ない。

 

思い切ってストロボ発光をやめてダークバスターのスイッチを入れ、間接光を使って撮影した写真がこのカットである。

周囲を思いっきりぼかすためにクローズアップレンズを用いている。

そのため、ピンポイントでしか焦点が合っていない。

ピントが完全に合った写真も何枚か撮れたが、それでも何かを訴えるこの眼の魅力に負けて、このカットをブログにアップすることに決めた。

 

「汝、我が名を知っての無礼であるか」

 

・・・と、竜の女王が頭の中でささやいた。

竜王の末裔たる神々しい響きとともに・・・。

まさにファンタジーの世界に飛び込んだかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2010年1月10日

Grant Sculpin クチバシカジカの抱卵

 

 

宮城県南三陸町志津川。

牡蠣の養殖で有名な志津川湾でクチバシカジカの抱卵がはじまりました。今年は、ダイビングポイント内で14箇所も抱卵している固体が発見されており、近年稀に見る当たり年と言われています。透明度も非常にいいという前評判だったのですが、なんと、志津川行きの数日前から強い低気圧が襲い、猛烈な風とうねり。気温は5度程度あるものの、体感気温はずっと低く、非常に寒い日となってしまいました。

海の方はもちろん強いうねりが湾内にも入り込み、透視度はなんと2m。まったく見えません。2日間の日程だったのですが、1日目は海に入るのを断念し、2日目に全てをかけて海況の回復を待つこととしました。

2日目は風は若干おさまりかけてきたものの、濁りは一向におさまりません。本来であれば、ボートが係留される梵天から10分ほど泳いだ場所にある「北の根」というポイントに向かう予定だったのですが、2mしか視界がない状況では、長距離の移動は危険と判断し、近場の抱卵場所に向かうことにしました。

 

 Grant Sculpin クチバシカジカ

 

 

 

Grant Sculpin クチバシカジカ

 

ポイント周辺では、産卵を終えた雌のクチバシカジカをたくさん見つけることができました。クチバシカジカは、雄が抱卵を行い、雌は産卵後はフリーになります。前回、志津川に来たときには、まだお腹の中に卵を持った雌を見かけましたが、じっと動かないで産卵時期を待つようなしぐさをしておりました。今回見た雌は、産卵後で身が軽くなったのでしょうか、結構、よく移動します。

 

志津川のダイビングサービスといえば、このブログでも何度もご紹介している「グラントスカルピン」さんです。今回は、オーナーの佐藤長明氏、奥様の凡子さんのお二人にガイドしていただけるという、超特別待遇でした。水温7度、透視度2mという劣悪な状況でありながらも、見事に抱卵中のクチバシカジカを見つけてくれました。ポイントを知り尽くした佐藤ご夫妻のガイディングは流石です。

 

しかし、クチバシカジカという魚。実は垂直の岩盤、もしくはオーバーハングした岩盤の下側にある窪みに巣を設けます。発見したクチバシカジカも、水底から1mほどの高さにせり出した岩盤の下側に巣を作っておりました。撮影するためには、水底に仰向けになり、カメラのハウジングを持ちながら、逆フィンピボット・・・。肺に空気を入れて上半身がやや浮き上がるようにし、ウネリをかわしながらピンを合わせます。かなり大変。

しかも、自分が吐き出したエアーが、クチバシカジカの巣に当たらないように工夫する必要もあります。どれくらいうねっていたか・・・別の場所で撮影したクチバシカジカの動画像をご覧ください。あまりの濁りとウネリで、ピントが合っているのか、合っていないのか判断がつかず、ボケボケの映像になってしまいましたが、なんとか写っていました。

 

 

 

 

 

ようやく撮影できたのがこの写真です。ピンク色に輝く卵がとても美しいです。クチバシカジカの卵は、約70日後に孵化するのだそうです。今年は3月の第一週がその週に当たりそうです。楽しみですね。

 

 

Grant Sculpin クチバシカジカの抱卵 

 

 

 

 

 

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サクラダイ Sacura margaritacea

 

 

 

サクラダイ Sacura margaritacea

 

 

大瀬崎先端の水深40m付近で撮影しました。

なかなか、雌雄で寄り添うシーンが撮れません。

またリベンジしなくては・・・

 

ところで、サクラダイの学名「Sacura margaritacea」のSacuraは、まさに桜の事だと思うのですが、margaritaceaというのは、どういう意味なんでしょうかね?マルガリータセアと読むのかな?マルガリータという言葉を連想させますよね。マルガリータというのは、イタリアの女性の名前に多いのですが、僕が連想したのは、カクテルのマルガリータです。

テキーラベースで、ホワイトキュラソーにライムジュースで割ったマルガリータは、世界的に愛されている、カクテルです。僕も大好きなカクテルのひとつで、特にアメリカ西海岸に旅行したときは、テキーラの名産地であるメキシコに近いせいか、どのレストランで飲むマルガリータもおいしかった記憶があります。このマルガリータの語源ですが、もちろんイタリアの女性名から来ているのは間違いがなさそうです。そして、イタリア語の語源は、ギリシャ語の真珠という意味なんだそうですよ。スノースタイルのマルガリータは、グラスの縁をライムで濡らし、その水分で塩をつけて楽しむのですが、この塩気がたまらなくおいしいんですよね。

話が逸れたついでに、margaritaceaの学名をもう少し調べてみると、ヤマハハコという植物の学名に行き当たります。このヤマハハコ(Anaphalis margaritacea)という植物は、高山性の植物のようで、真っ白な花弁が印象的なかわいい花を咲かせます。この花弁が開ききっていない状態のとき、綿毛のようなつぼみが真珠のようなので、margaritaceaの学名がついたのでしょう。

サクラダイの学名には、桜と真珠という二つの美しい名前がつけられています。その気持ちがよくわかりますよね。その美しさのあまり、見つめすぎていると、マルガリータどころか、窒素酔いになってしまうのでご注意を。

 

 

 

 

 

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2010年1月 9日

シロウミウシ Chromodoris orientalis

 

 

 

シロウミウシ Chromodoris orientalis

 

 

大瀬崎の先端ポイントでシロウミウシを観察しました。伊豆では代表的なウミウシのひとつですが、改めてこうして観察すると、いろいろな事がわかります。まず、黒いドットですが、どの固体も模様が異なり、どれひとつとして同じ模様がありません。そんなの当たり前ジャン・・・という言葉が聞こえてきそうですが、でもどうしてなんでしょうね?考えてみると、ウォルト・ディズニーの名作、『101匹わんちゃん大行進』に出てくるダルメシアンも、全て模様が異なる犬でしたよね。白と黒の動物って結構、多いと思うのですが、たとえばシマウマなんてどうなんでしょうか?

 

 

シロウミウシ Chromodoris orientalis 

 

この子なんかは、顔の正面に×印がついているみたい。

 

 

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大瀬崎湾内の小さな魚たち

 

 

大瀬崎の湾内にはムラサキハナギンチャク(Cerianthus filiformis)がたくさん生息しています。毒を持つこのムラサキハナギンチャクは、幽玄な姿をしながらダイバーの心を癒してくれます。

 

コスジイシモチ Apogon endekataenia

 

コスジイシモチの幼魚がムラサキハナギンチャクを宿にしていました。

 

アミメハギ Rudarius ercodes

 

ウミシダの色に交わってアミメハギの幼魚が戯れていました。

 

アオサハギ Brachaluteres ulvarum

 

こちらはアオサハギの若魚。幼魚の頃は、真黄色ですが、少し大人っぽくなりました。

 

 

 

キンギョハナダイ

 

大瀬崎の浅瀬にはどこにでもいるキンギョハナダイ。とても美しい魚ですね。

なかなかいいタイミングでこちらを振り向いてくれないのですが、ブルーのアイシャドウが入ったキュートな眼が素敵です。

 

 

 

 

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2010年1月 8日

大瀬崎 魚の顔 デビッド・デュビレ 『魚の顔図鑑』に触発されて

 

先日の『白と黒』の記事でご紹介した、水中写真の巨匠であるDavid Doubilet (デビッド・デュビレ氏)が、魚の顔図鑑という素晴らしい図鑑を刊行しています。触発される事、大なのですが、到底デュプレ氏の感性には追いつきようもありません。せめて気持ちだけということで、大瀬崎の魚たちの顔写真を集めてみました。

 

 

イロカエルアンコウ Antennarius pictus

 

イロカエルアンコウ Antennarius pictus

 

4cmほどの幼魚です。ストロボを当てて撮影していたら、エスカを振りだしました。

エスカの下に小さなポリプが咲いてますでしょ?そのポリプをパタパタと叩きで掃除しているみたい。

面白いですね。ずっと見ていたい。

 

 

クロメバルの幼魚 Sebastes ventricosus

 

クロメバル Sebastes ventricosus

 

この、メバルの幼魚ってとてもかわいいんですよ。中層に浮いていて、こっちを見つめるようなしぐさをします。

かわいいですね。 

 

クツワハゼ Istigobius campbelli

 

クツワハゼ Istigobius campbelli

 

 

ダルマオコゼ Erosa erosa

 

ダルマオコゼ Erosa erosa

 

 

オニカサゴ Scorpaenopsis cirrhosa

 

オニカサゴ Scorpaenopsis cirrhosa

 

結構気に入っている写真です。オニカサゴって味のある顔をしてますよね。

その上のダルマオコゼは、どことなくひょうきん。でも写真写りがよくない代表格。

ダルマオコゼをどう写せば面白い写真になるでしょうかね。

 

クロダイ Acanthopagrus schlegelii

 

 

 クロダイ Acanthopagrus schlegelii 

大瀬崎先端ポイントで最近よく見かける黒鯛です。詳しい場所を記載すると、釣り氏が集まってきてしまい、釣り禁止区域の意味がなくなってしまうので書きません。なんと50cmオーバーの巨大なやつです。

 

ボラ Mugil cephalus

 

 

ボラ Mugil cephalus

 

ボラの大群を愛称をこめて「ボラクーダ」なんて呼んだりします。もちろんダイバー用語で、一般に通じる呼び方ではありません。

このボラクーダを水面すれすれで撮影するのが、ひとつの目標なのですが、なぜかいつも失敗します。

のんびりしているようで、非常に神経質なボラ。

第六感があるのか、カメラのファインダーで狙おうとすると気がついて逃げていきます。

いつの日か、メーター級のボラが大群で泳いでいるシーンを撮影してみたいです。

 

ゴンズイ Plotosus lineatus

 

ゴンズイ Plotosus lineatus

 

このサイトでも何度かご紹介したゴンズイです。

幼魚の間は結構かわいいのですが、大人になってくると、かなりグロテスク。しかも猛毒を持っているというから、なおさら嫌われやすい魚です。でもこうしてみると結構、かわいらしいでしょ!?天麩羅にして食べるとおいしいらしいのですが、背びれと胸鰭の毒は死んでもなくならないらしいので、料理するときは覚悟がいりますね。まあ、こうして写真に撮って楽しむのがいいのではないでしょうか。

 

番外編 ダイビングショップ「河童」さんのグクちゃん

 

 

ダイビングショップ「河童」さんのグクちゃん

 

番外編というか、おおとりですな。

 

 

 

 

 

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2010年1月 7日

生きている海の妖精

 

 

コモンウミウシ Chromodoris aureopurpurea 

 

 

 

「生きている海の妖精」とはよく言ったものです。

 

ウミウシのこの美しさ、艶やかさはいったい何の目的のためにうまれてきたのでしょうか。自然界の生物のほとんどは、姿や形、色彩や行動の全てに理由があり、進化をしてきた結果、そのような状態になっていると考えられています。しかし、ウミウシはとても種類が多く、確かに保護色的な色合いのものもいます。さらに、毒々しい色合いをしていて、天敵から身を守ろうとするものもいます。ところが、大部分のウミウシは、そのどちらに合致するとも思えず、われわれ人間が見て美しいと感じるためだけのデザイン、色彩をしているかのような気持ちにさせられます。

いつの時代か、人間が自由に海に潜れるようになり、そして自分たちを発見して美しいと感じてもらえるように進化してきたのだ・・・と、メッセージを送っているような気がします。そして、ウミウシに興味を持った人間は、海のすばらしさを感じるようになり、自然を大切にする、しいては地球環境を大切にする心持始める・・・そう願って、彼らは進化してきたのではないかと。まあ、想像でしかないのですが、そんな風に感じてしまうのです。

生きている海の妖精は、われわれ人間に対して、地球環境の大切さを伝えるために生まれた、使徒なのかもしれません。

 

 

 

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2010年1月 6日

ウイゴンベ Cyprinocirrhites polyactis

 

 

 

ウイゴンベ Cyprinocirrhites polyactis

 

大瀬崎湾内のマンボウ桟橋前のケーソンに見慣れない魚がいました。ウイゴンベ(Cyprinocirrhites polyactis)という名前の魚だそうです。ウイゴンベのウイは発見者である宇井縫蔵氏の名前からつけられたそうです。棘のように分かれている背びれの先端が、ゴンベの仲間である事を印象付けます。

 

 

ウイゴンベ Cyprinocirrhites polyactis

 

 

ウイゴンベとホシノハゼ

 

大瀬崎ではもっと深い場所に普通に見られる種類のようですが、この日は水深22mのケーソンでゆらゆらと泳いでいました。どことなく、不安定な泳ぎ方で、大丈夫かな?って感じでしたが、そういう魚なんだそうです。(ほんまかいなっ!?)

たまにはケーソンにいってみるもんですね。

今回初めて見ることができたので幸運でした。

 

 

 

 

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2010年1月 5日

ナガハナダイ Pseudanthias elongatus

 

 

大瀬崎先端でのダイビングはとても魅力的です。水深5mから一気に70mまで落ちるドロップオフ。

水面は明るくても、30mを越える頃には暗く、しかし透明度が良く、独特の雰囲気が漂っています。30mを超えて眼が慣れた頃、ムチカラマツの林を良く見ると、ハナダイの仲間がたくさん群れています。この日は水深40mで、このナガハナダイ(Pseudanthias elongatus)の乱舞に癒されました。

 

 

ナガハナダイ Pseudanthias elongatus

 

 

ハナダイの仲間はハタ科の魚です。とても美しくエレガントな姿が魅力的ですよね。ただ、結構すばしっこくて、いきなりカメラを向けると大抵、逃げてしまいます。なので、ハナダイの群れに近づいたら一呼吸。しかも吐き出すエアー音に驚くので、静かに・・・慣れるまで・・・。エアー音に慣れるとあまり逃げなくなるようです。

 

 

ナガハナダイ Pseudanthias elongatus

 

 

もうひとつ、面白い事を発見しました。

このナガハナダイや、アカオビハナダイなど、ストロボ光をバンバン当てて撮影していると、どうも色合いが変化してくる?ナガハナダイの場合は、体表の赤色が濃くなってくるような気がします。アカオビハナダイの場合は、特徴的な赤い帯がくっきりとしてくるような気がします。興奮すると体色の発色が良くなってくるのでしょうか?

気のせいかな?

 

 

 

 

 

 

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2010年1月 4日

伊豆の死滅回遊魚 ツバメウオ Platax teira

 

 

ツバメウオ Platax teira

 

2009年の秋頃から、大瀬崎の湾内に住み着いたツバメウオ。南方系の魚なので、もちろん伊豆では死滅回遊魚です。

この日は、水温が15度まで下がっておりました。

いよいよ元気がない様子です。

 

 

ツバメウオ Platax teira

 

顔を見るとたくさんの傷跡が付いています。

ダイバーが原因なのでしょうか?それとも別の理由なのでしょうか?

数十枚の写真を撮りながら、このツバメウオのことを考えていたら、なんだか悲しくなってきてしまいました。

 

ツバメウオ Platax teira

 

まだ、あどけなさが少し残っている若魚です。

群れからはぐれ、遠い日本のこの地まで台風と黒潮に流されてやってきました。

寒さに耐えながら、その日を待つだけの毎日です。

次にこの場所に行ったときには会えるのでしょうか。

 

 

 

 

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2010年1月 3日

じっとして・・・カエルアンコウ

 

 

大瀬崎のカエルアンコウ

 

最近どうも、食傷気味というか・・・ストロボをばちっと当てた写真では物足りなくなってきました。

ピンもあえて外してみたり、どんなに深い水深でも自然光が届くなら、その光を頼りにしてみたり・・・。

まあ、最新のデジカメだからこそ出来る荒業なんですけどね。

 

冬の伊豆では、水深20mや30mでも透明度が良いので、結構明るいものです

EOS 5D Marlk2でISO感度を極端に上げると、確かに画面の粒子は粗くなるのだけれど、ストロボの人工的光にはない、柔らかな陰影が表現できるようです。

 

大瀬崎 カエルアンコウ

 

気がつくと20分近く、このカエルアンコウを撮影していました。

特にカエルアンコウが好きなわけではないのですが、幼魚ではない、成魚のカエルアンコウが醸しだす独特の迫力をなんとか表現できないものかと・・・

難しいもんですね。

この子に夜に会えたらいいのに・・・そうしたら、もっと分かり合えるような気がします。

そうしたら・・・もっといい顔で撮ってあげられるかな。

 

 

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2010年1月 2日

大瀬崎のウミウシ

年末が近づき、水温が急に下がり始めました。1週間前までは平均水温が18~20度だったのですが、この日は、15度~18度。一気に3度近く下がった事になります。水温が下がり始めるとウミウシシーズンの到来です。この日、大瀬崎でのダイビングで観察したウミウシをご紹介しましょう。

 

セスジミノウミウシ Flabellina rubrolineata

 

セスジミノウミウシ Flabellina rubrolineata

 

ミノの色がオレンジ色に染まった美しいセスジミノウミウシです。ミノの部分の色は、食べたものの色素によって変化します。この個体は、体長が2cmくらいでした。

 

セスジミノウミウシ Flabellina rubrolineata

 

このセスジミノウミウシはさらに小さく、1cm程度でしょうか。どうも、この日はセスジミノウミウシにとって快適な日だったようで、たくさん発見する事ができました。

 

フウセンウミウシ Notarchus indicus

 

フウセンウミウシ Notarchus indicus

 

フウセンウミウシ Notarchus indicus

 

まん丸に丸まってぷかぷかと漂ってしまう面白いウミウシです。まさに、名前通り「フウセン」ですね。黒くてチッチャな眼が見えます。

 

 

コミドリリュウグウウミウシ Tambja amakusana

 

コミドリリュウグウウミウシ Tambja amakusanaようやくコミドリリュウグウウミウシが出没するシーズンになりました。この個体は10mm以下のとても小さな個体なのですが、大瀬崎のコミドリリュウグウウミウシは写真のようにオレンジ色をしたものが多いようです。グリーンやブルーがかったコミドリリュウグウウミウシは、大瀬崎ではまだ見たことがありません。

 

 

チャイロミドリガイ Elysia sp.

チャイロミドリガイ Elysia sp.

 

非常に小さい、4mmほどの個体。名前は定かではないのですが、体表の白い斑紋がはっきりしてくるとチャイロミドリガイ(Elysia sp.)といえるのではないかと思うのですが・・・いかがでしょうか。

 

 

ツヅレウミウシ Discodoris lilacina

 

ツヅレウミウシ Discodoris lilacina

 

今回初めて見たツヅレウミウシ(Discodoris lilacina)です。体長は3cm程度。非常に地味な色合いのウミウシで、触覚を立てるまではウミウシだとは気がつきませんでした。じっくり時間をかけて、観察していて良かったです。

 

 

ビワガタナメクジ Dolabrifera dolabrifera

 

ビワガタナメクジ Dolabrifera dolabrifera

 

このビワガタナメクジ(Dolabrifera dolabrifera)も今回初めて見ることができました。ナメクジ・・・なんて名前がつけられていますが、アメフラシの仲間です。このビワガタナメクジもとても地味な色合いですよね。

 

 

マンリョウウミウシ Hoplodoris armata

 

マンリョウウミウシ Hoplodoris armata

 

これも地味系の代表格、マンリョウウミウシ(Hoplodoris armata)です。健康サンダルなんてあだ名がついちゃって、ちょっとかわいそうかな・・・いやいや、愛称ですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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いろいろ、イロミノウミウシ Spurilla neapolitana

大瀬崎の潮干帯(タイドゾーン)で観察したイロミノウミウシ。

いろんな大きさ、いろんな色合いの個体が発見できます。

 

イロミノウミウシ Spurilla neapolitana

 

 

イロミノウミウシ Spurilla neapolitana

 

この個体は、クリーム色。ミノが透き通っているので、まだお腹が空いている状態でしょうかね?これからお食事かな?

 

イロミノウミウシ Spurilla neapolitana

 

この個体は、少し大きく3cmぐらいでしょうか。ミノも色づいていかにも毒々しくなってきました。このミノには、食したイソギンチャク類の毒素を蓄えており、敵から襲われたときにその毒を用いて身を守ります。

 

イロミノウミウシ Spurilla neapolitana

 

いかにもイロミノウミウシ・・・どっぷりとした貫禄。毒々しい色合い。

すごいですねぇ。

 

 

 

 

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2010年1月 1日

大瀬崎のキモカワユス海洋生物

 

 

大瀬崎で観察した面白い生物達です。

見ていて飽きない生物ばかりですね。

 

スケロクウミタケハゼ Pleurosicya boldinghi

 

スケロクウミタケハゼ Pleurosicya boldinghi

 

ウミトサカをじっくり探すと、必ずこのスケロクウミタケハゼ(Pleurosicya boldinghi)がちょこまかと顔を覗かせます。目立ちたいのか、恥ずかしいのかはっきりしないヤツ。とても可愛いですよね。

 

 

イロカエルアンコウ Antennarius pictus

 

イロカエルアンコウ Antennarius pictus

 

岩にじっと張り付いて、寝ているのかと思いきや、良く見ると眼を動かしていたり、エスカをプルプルと震わせていたり・・・なんだ、ちゃんと起きているんじゃん・・・という、これまた良く分からない生き物。夜になると盛んに活動するんですけどね。

 

 

ムスメウシノシタ  Parachirus sp.

ムスメウシノシタ  Parachirus sp.

 

外海の丸くて大きな岩の上を探すと、必ずといっていいほどこのムスメウシノシタ (Parachirus sp. )が何枚かいます。擬態が得意なので、目立たないのですが、ヒラヒラと動くので、結構、見つけやすいヤツです。

 

イバラカンザシ Spirobranchus giganteus

 

イバラカンザシ Spirobranchus giganteus

 

海のクリスマスツリーこと、イバラカンザシ(Spirobranchus giganteus)です。ゴカイなどと同じ、環形動物です。

写真を見てお分かりいただけるように、一匹のイバラカンザシには、必ず2本の鰓冠があります。いろいろな色をした鰓冠があるのですが、全て同じ種類なのか・・・?あるいは違う種類なのか?良く分かりません。

 

 

イナズママメアゲマキガイ Scintilla violescens

 

イナズママメアゲマキガイ 

二枚貝の仲間です。石の隙間というか、裏側にこうして張り付いていることが多いです。吸水菅を出したり引っ込めたり・・・ちょうど、買ってきたアサリを塩水に漬けて砂を吐かせているときの様子に似ています。

 

ヤドカリの仲間

 

 

ヤドカリの仲間

 

人為的に乗せたわけではなく、発見した時にはこうして貝殻の上にもう一匹のヤドカリが乗っていました。

カップルなんでしょうかね?

 

 

タコの仲間

タコの仲間

 

とても小さなタコを見つけました。

最初は、ウミウシかな?と思ってファインダーを覗いてみたら大きな眼が・・・。

海底に落ちていた落ち葉の上に乗っていますが、タコは落葉が好きなようなのです。

ですから、海底に落葉樹の落葉が落ちていたら観察してみて下さい。

もしかしたら、タコの赤ちゃんがついているかもしれませんね。

 

ボウズコウイカ Sepia erostrata

 

ボウズコウイカ Sepia erostrata 

タコの次はイカです。

湾内の砂地・・しかも吹き溜まりになるような場所に、きっとこの子はいます。

いろいろな色に変化しますが、カメラのフラッシュが嫌いみたいです。

きっと、見たこともないような光量で、驚いてしまうのでしょうね。

 

 

 

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Happy New Year 2010

大瀬崎 柵下から見た駿河湾と富士山

 

新年明けましておめでとうございます

本年も何卒よろしくお願い申し上げます

皆様の益々のご活躍と

安全で楽しいダイビングライフをお祈り申し上げます

 

平成22年元旦

Endlessblue

 

 

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